まえがき

イギリス録音とアメリカ録音のまざった、私の憧れの音がつまったくるりのアルバム『NIKKI』より。アルバム曲らしいアルバム曲かもしれません。コンパクトで爽やか、くるりの「らしさ」の一端が気持ちよくあらわれています。DメージャーのヴァースがFに転調してまた味わえる。そしてふわっと地平が浮くみたいにまた元の調に戻ります。

虹色の天使 くるり 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:岸田繁。くるりのアルバム『NIKKI』(2005)に収録。

くるり 虹色の天使を聴く

平静なトーンのリードボーカルの質感のあまみ、スウィートなニュアンスが終始堪能できます。岸田さんの声の低めのポジションのときに発揮されるくるり曲の魅力の一面。Dメージャーで低めにヴァースを提示したあとに短3度上のFメージャー調で同じヴァースが再現されるので、ボーカルのみずみずしさが倍増して感じられます。Ⅵ♭→Ⅶ♭(B♭のコード→Cのコード)を経由してなめらかにFに転調する景色の展開のジェントルぶりと、ふわっと元のDメージャー調に戻すときの浮遊感。楽曲の調の響きの景色に緩急があるのが素敵です。

バンドの音はおおむねオープンで豊か響きを終始保ちます。ドラムスのシンバルづかい、疾走感ある快活なビートの恒常性のなかにも分割の変化のアソビを入れるなど、倍音でみたされた音の景色に細かい変化を与えるドラムさばきの器用さと解像度のコントロール、その自然さと、かつグイっとリードする漢気を同居させたブラボーな演奏はクリフ・アーモンド。

ベースの指弾きの弦を撫でるリリースの瞬間のニュアンスまで豊かでうっとり。

リードボーカルがヴァースに戻る瞬間に複数のボーカルトラックがクロスするアレンジ。ライブだったらどう演奏するのでしょうか、複数のメンバーで歌うのか、多少メロディのハメかたを前後させて(ライブ用に改変して)1人で歌うのか。

ほろーっとオルガンのゆらめきがここぞと欲しいところにスライディングしてきてくれる。堀江博久さんの演奏です。

曲調はまるで違いますが、歌詞の質感がちょっとはっぴいえんどの『夏なんです』みたにイノセント、純白で無垢な感じが好みです。曲名の『虹色の天使』もなんだか60年代のグループサウンズ曲とかに存在してもおかしくない感じが個人的にツボですが話を逸らせすぎでしょうか。私の音楽嗜好のツボ、ボタンをたくさん押すポイントが短いながらも詰まっているのです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>NIKKI

参考歌詞サイト 歌ネット>虹色の天使

くるり 公式サイトへのリンク 4か月連続シングルリリースと“くるりツアー25/26 ~夢のさいはて~”を一気に発表した近況のくるり。鮮度がほとばしります。

『虹色の天使』を収録したくるりのアルバム『NIKKI』(2005)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】滑らかな転調 虹色の天使(くるりの曲)ギター弾き語り』)