ノルウェーの森 Norwegian Wood (This Bird Has Flown) The Beatles 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Beatlesのアルバム『Rubber Soul』(1965)に収録。
The Beatles ノルウェーの森 Norwegian Wood (This Bird Has Flown) 2009 Remasterを聴く
たった2分でこの神秘的で浮ついた叙事を完結する凄み。シタールの音色とアコギによるモチーフのユニゾンは飛び去る鳥の運動のようでもあるのですが、どこか地に落ちてめり込む不気味さを持ち合わせており脅威です。
歌詞“wood”の発声のところでかなり低域までおちるボーカルの音域。ブリッジのところで高音ボーカルが加わるのはポールの歌唱でしょうか。ジョンのリードボーカルは比較的低めのポジションで歌いきる楽曲ですが、ほかのボーカルパートも含めると上のほうの音域まで描き込みがあります。ポールとジョンの声域の違いはビートルズ曲の大多数における独特の魅力を発露しています。
エンディングの歌詞が痛烈です。あきらかに、たばこに火をつける光景が似合うシーンなのですが……実際、たばこに火をつけたという解釈を完全否定する文章にはなっていません。私のように、たばこに火をつけたんだろうなと読解しても頓珍漢ではないでしょう。そのあとにつづく一文が問題です。
Norwegian Woodがisn’t it goodですって? この順序で歌うから、たばこに火をつけたようにも、家具・家材あるいは家自体?に火をつけたようにも読めてしまう。
ジョンらしい、というかリヴァプール人らしいとでもいうのか、たいへん飛距離のある切れ味の深いジョークに読めるのです。
火をつける行為はつける対象がたばこであればありふれた動作ですが、家具だとかあるいは家に火を放つとなれば一大事です。ありふれた動作も、対象(目的先)が違えば話ががらりと変わってくる。言葉の「小違い」や見せる順序ひとつで生じる言葉の痛烈な飛距離を味方につけて、ビートルズは世界を魅了するのです。
ジョンらしい、と思わせるオチなのですが、このアイディアはポールによるラインである、とポール自身によって語られてもいるとか。境界はいずれにせよ、全部でビートルズなのです。
あのあかりはなんだ? 日の出のあかりにしてはまがまがしい。何が燃えているのやら。
青沼詩郎
参考歌詞サイト KKBOX>Norwegian Wood (This Bird Has Flown)
『Norwegian Wood (This Bird Has Flown) 』を収録したThe Beatlesのアルバム『Rubber Soul』(1965)
参考書
『ビートルズを聴こう – 公式録音全213曲完全ガイド』(中央公論新社、2015年)