大寒町 あがた森魚 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:鈴木博文。あがた森魚のアルバム『噫無情(レ・ミゼラブル)』(1974)に収録。

あがた森魚 大寒町を聴く

大寒町っでどこだろうと一生けんめい検索した私。答えは架空の町だと思いました。楽曲の世界の地名です。現実にモデルがあるのか未確認。

コンパクトな歌詞が身にしみます。ボーカルメロディの長い音価とゆったりとしたテンポが印象的で曲のサイズは約4分半。

あがた森魚さんの独特の声の深みとエッジ、伸びる声のはっきりと確かで強い揺らぎ。ダブルトラックやハーモニーは用いません。孤独で哀愁を感じます。逃げも隠れもしないただ1本の線が、やり直しのきかない人生の軌跡に重なります。

左にピアノ。右にチェンバロのような撥弦系の鍵盤楽器。エレクトリックピアノも右にいるようで、ベースラインっぽいひっかかったようなリズムのリフレインをしたり、オープンなサウンドで響きを支えたりします。

ベースとドラムのキックがストロークのポイントを最小限に抑え、雄大な景観を演出します。アクロバティックに動くこともできるでしょうに、あえて見守る視線が温かい。カツっとスネアはほとんどリムショットに終止します。歯切れが良く、ゆったりしたテンポの楽曲に縦方向の確かなランドマークをポイントしていくようなリムショットです。

クワァーンと伸びていくアコーディオンの複音の音色が国道沿いのガードレールみたいな趣です。躯体が響き、機構が動作する微細な振動まで感じる名演です。

左のほうではエレキギターのタイトで短いカッティングが黙々と等間隔に農作業をこなしていくみたいな渋みです。

Fメージャー調でⅦ♭、すなわちE♭の和音を埋設し響きに起伏を与えます。まっすぐで悠然とした印象のテンポと曲想なので、ちょっとスパイシーな和音が入ることでこちらは歯茎が引き締まる想いです。

確かな演奏で、現実の時間が流れる路面から数メートル浮いた、街灯のあかりみたいな美しい詩篇のような音楽です。こういう曲をずっと、ひとつでも多く作っていきたいと私も思います。

作詞作曲はムーンライダーズの鈴木博文さん。共同してひとつの世界を確立する仲間がいることは生きる希望になります。

青沼詩郎

参考Wikipedia>あがた森魚

参考歌詞サイト 歌ネット>大寒町

あがた森魚 公式サイトへのリンク アルバム『オリオンの森』を2024年11月6日リリース。幻想的で重層で独創的で生々しく臨場感があるサウンドの数々に憧れます。

『大寒町』を収録したあがた森魚のアルバム『噫無情(レ・ミゼラブル)』(1974)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『大寒町(あがた森魚の曲)ピアノ弾き語りとハーモニカ』)