末長く、お楽しみに
吉田拓郎さんによるバンカラな提供曲『我が良き友よ』が収録され表題するアルバムに収録された、大瀧詠一さんによる提供曲が本曲です。
己の引っ込み思案、内気、シャイを自覚し「お先にどうぞ」と譲っているうちに、8歳ではじまった譲り人生は倍数でレベルがあがっていきいつしか周囲は妻帯者だらけ。
しかしドゥ・ワップあるいはサーフ・ミュージックのように壮麗に高く青天井を仰ぐバックグラウンドボーカルが(まるで山下達郎さんの得意とする音楽スタイルのようで)さわやかで、その態度は腐っていません。自分がほかを立てて、追い越しをさせてあげて、マイペースに走るのを自覚し受け入れて、そのうえで明るく生きている態度が楽曲のたのしげな雰囲気にあらわれていると思います。
かまやつさんの「趣味こそ我が道楽なり」といわんばかりの世間から2〜3メートル浮いたのどかさが漂う歌唱が楽曲のアイデンディティと好相性。ブルブルと排気筒を鳴らすクラシックカーのようにメロディにリズムを内包させます。
その人生ポリシーの恒久を意匠するようにエンディングは「お先にどうぞ」のリフレインの最中でフェード・アウト。末長く、お楽しみに。
お先にどうぞ かまやつひろし 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:大瀧詠一。かまやつひろしのアルバム『あゝ、我が良き友よ』(1975)に収録。
かまやつひろし お先にどうぞ(アルバム『あゝ、我が良き友よ』収録)を聴く
シャレみたいなにぎやかな雰囲気をかもすのは盛大なトラック数。音数がすごいです。どれだけ入っている? 声も多いし楽器も多い。
右寄りのトラックにピアノ、エレクトリックピアノ、ビブラフォンなどが響きや音域を譲り合いながらごちゃっと共存します。左トラックのほうがやや軽めでチャカチャカと小物パーカスが風通しよさそうに佇みます。サックスが左右に入っているでしょうか。エレキギターも脇を固めます。
ボーカルが高いところから低いところまでいます。左のほうには「チュキチキ……」とバンドがブレイクしたところに子音でソロするトラック。ハイトーンボイスで舞い上がる者もいればエンディング付近では「デンデケデンデケ」……と喉の奥から胸を鳴らす低い声。主題の「お先にどうぞ」をリフレインするボーカルも分厚いハーモニーになっています。バックグラウンドボーカルと称するのも然り、「ガヤ」みたいな非音楽チックな、ほどよく遊んだ態度が溢れます。バックグラウンドボーカルトラックには大瀧さん成分多めですがかまやつさん自身もいるようです。
大滝さんの名作「ロンバケ」の壮麗なサウンドに至る前の、カチャカチャしているが多くのトラックが必要十分な調和をなしている凄みがあります。あくまでその凄さを、シャイで内気な態度で覆い隠す、滲み出てしまったとしても自ら茶化す・照れを隠す態度で楽しい雰囲気に仕上げ、その底にある諦観の哀愁をハンカチで覆ってやる慈愛を感じます。カジュアルで気さくなのに凄みがあるのが痛快な独自性です。
青沼詩郎
Monsieur Kamayatsu Forever | ムッシュかまやつWEB記念館へのリンク
『お先にどうぞ』を収録したかまやつひろしのアルバム『あゝ、我が良き友よ』(1975)