まえがき

シックスやメジャーセブンスの音程の緊張感とあいまいな浮遊感とペンタトニックスケール感あるボーカルメロディの掛け合わせがエルヴィスの耽美なイメージにぴったり。ビート感は非常に穏やかで、カームなリムショットとブラシワークに慈愛と品性が漂います。キラキラしたシンセみたいな音がミステリアスでなんの楽器の音色なのでしょう。曲中、ハーモニウムのような楽器の音も聴こえるように思うのですが、それなのかどうか、あるいはそれに加工をほどこしたサウンドなのかあるいは別の楽器なのか。チラン、キランと発音のタイミングをバラつかせた和音で印象づけます。 YMOが『ボケットが虹でいっぱい』とのタイトルでカバーしてもいて、1993年の彼らの再結成を印象付ける曲(シングル、アルバム『テクノドン』収録w)としての側面もあるようです。

Pocketful of Rainbows Elvis Presley 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Fred Wise & Ben Weisman。Elvis Presleyが主演した映画『G.I. Blues』(1960)のオリジナルサウンドトラックに収録。

Elvis Presley Pocketful of Rainbows(OST『G.I. Blues』収録)を聴く

ウットリさせます。やさしく包み込むようなエルヴィスの魅力がいっぱい。“For a lonely night”で文末の”night”の語末を繰り返しながら高音への跳躍と脱力しながらふわふわと下行する音形を歌うところの柔和なタッチ。エンディングの”Rainbows”を繰り返すところの、花が夜風にそよめくような慈愛に満ちたボーカルビブラート。ちぢれが強くてなおかつ耳ざわりがやさしい。息になびき、からだにひびく声色が絶佳です。

左右にわかれた楽器の定位、セパレーションがよくて、かつふわっとアナログの質感で空間同士の接着もよいサウンド、そしてもちろんその編曲面も絶妙。

右側にチラン・キランとほぐれた和音は高音側から低音に向かってバラかせてあります。カッカ……とドラムスも右定位。左にはメジャーセブンスやシックスの響きが憂いに満ちたピアノの音色がマイルドです。

左にベースがいて、分散で和音をとるような、それでいて経過音でずりあげるような上行パターンのリズムリフレインが印象的です。ちょっと引っ込んだバランス感でシャミシャミ……とエレキギターもささやかに同調を添えます。アコギはアコギでいて、高音弦をやさしく撫でるようなストラミングが優しい。エルヴィスのリードボーカルの残響が右側に向かって広がるような空間の空気の流れの方向みたいなものを感じるのが面白いところです。

ふれられるわけないし、つかまえられないしポケットにしまえるわけもない、遠くからみるからこそ存在を認知できる幻みたいな自然が魅せる気まぐれ、「虹」をポケットいっぱいにという発想が一級の天真爛漫。

でも私たちには知性があるから、虹だってポケットにいれていっぱいにすることができるのです。みんなが「虹」を知っているし、ポケット(心)をもっている。詩的です。

青沼詩郎

参考Wikipedia>G.I.ブルースエルヴィス・プレスリーエルヴィス・プレスリーの作品

参考歌詞サイト AWA>Pocketful of Rainbows

エルヴィス・プレスリー ソニーミュージックサイトへのリンク

『Pocketful of Rainbows』を収録したElvis Presleyが主演した映画『G.I. Blues』(1960)のオリジナルサウンドトラック

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】ポケットが虹でいっぱい Pocketful of Rainbows(Elvis Presleyの曲)ウクレレ弾き語り』)