まえがき
エレクトリックピアノの音色がにじみわたる、カーペンターズの演奏で私はこの楽曲を知りましたので、凛としたオトナの品のある歌唱で歌詞のメッセージも入ってきて、印象がつくられたわけです。原曲は人形劇映画の登場人物、カエルのカーミットが歌うもので、彼が彼の人格として歌うものとして認識すると、印象も味わいも違うのをなお実感。純朴な想いが沁み入り、胸にグッとくるものがあります。カエルのカーミットの歌唱はジム・ヘンソン(Jim Henson)さんによるものです。あとからご本家(Kermit the Frog)の実演を知ったので初めて聴いた瞬間はバンジョーメインの伴奏が意外でしたが聴くほどにこれぞなフィット感です。バンジョー、欲しくなりますね。
Rainbow Connection 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Paul Williams、Kenneth Ascher。映画『The Muppet Movie』(マペットの夢みるハリウッド)劇中歌で、オリジナルサウンドトラック(1979)に収録、カエルのカーミットが歌う。Carpentersのカバーでも知られ、未発表音源集『As Times Goes By』(2001)に収録され同年7〜9月の日本のテレビドラマ『恋がしたい 恋がしたい 恋がしたい』主題歌に起用された。
Kermit Rainbow Connectionを聴く
ためいきが出ちゃう名曲ぶりだなぁ。もう全部どうでも良くなっちゃうな。
ジム・ヘンソンさんの飾り気のない歌声が、さみしくて、あたたかくて、かわいらしくて、ねじがぬけたり緩んでいたりしそうなほっとけない感じ。いたいけ。庇護したくなるのです。私と、カエルのカーミットの関係があって共生がなりたつみたいな、このそばにいる感。フレンドリーさ。輪はやっぱり複数いるから成り立つのです。私とあなた。あなたに言っているんだよという、この隣にいる感はなんでしょう、向き合っているような威圧や重さとは違うんです。絶妙だなぁ。
ぱらんぱらんとほどけるようなバンジョーの音色が魅惑です。この、ボディへの鳴りの薄さがたまらない。深くふくよかなアコースティックギターでは決して得られません。ペカンペカンと、弾いたらまたたく間に響きが減衰します。しかしその一瞬のペカンという共鳴の儚さこそが尊い。
つつみこみ、寄り添い、上空に虹をかけ、しかし森の木立のあいだの風の通り道は尊重するようなオケ、ベーシックの類がまた友好的です。ウインドチャイムの繊細さ優しさときたら絶品です。
ドラムスのやさしい録れ音の前後感がいいなぁ。自然です。マルチマイクで明瞭に一個一個の太鼓の音を余すことない解像度で録ってミックスするのが近代の娯楽音楽の圧倒的強勢なサウンドですが、あんなのずっと聴いていたら疲れるって。室内に一緒にいて、その空間の音が自然に寄り添っているみたいなドラムの音を久しぶりに聴きました。もちろん、遠くて埋没しているのとも違います。あくまで一緒にいて、調和している。そんなドラムの音です。
AメージャーからB♭に転調する少し直前くらいから、スネアのオープンなストロークの頻度を恒常的にしていきます。そしてB♭に転調したところから、カーミットの声に残響効果がかかり始める。このボーカルのサウンドに「虹がかかった」感をたまらなく覚えるのはなぜでしょう。反響という観念は、空間あってこそです。また、誰かが誰かの行動を評価するのを反響と表現することもあるでしょう。このコール・アンド・レスポンスの関係こそが、虹のもたらすつながり。結び目。コネクションなのでしょう。震えるなぁ、心が。
6/8拍子と解釈するのがいいでしょうか。かつ、8分音符1個ずつを3分割した円環を思わせるビートが優しいのですが、ブリッジの部分というのか、”So we’ve been”……と歌うところで8分音符の分割が偶数系に変わるんですよね。ここがドラマティックでまた涙腺に来ます。美しいかよ……
人形劇というのがまた優しくていいよね。本編、見なきゃなと思います。ディズニープラスで観られるみたいです。
青沼詩郎
参考Wikipedia>レインボー・コネクション、マペットの夢みるハリウッド
参考歌詞サイト Genius>Rainbow Connection
『Rainbow Connection』を収録した『The Muppet Movie ORIGINAL SOUNDTRACK RECORDING』(1979)