恋のことを考えた。

いや、正確には「結婚」のことを考えた。

結婚相手を、自分で決めていなかった時代があった。

郷土史などを読むに、私の住んでいる地域もそうだったらしい。

親だとか家の者どうしのあいだで、あらかじめ「縁談」が組まれている。

「結婚式の当日に初めて結婚相手の顔を見た」

これは極端な話に思えるけれど、本当にあったことなのだ。

現代は、結婚は自分の意志で決めるというのが主な理解だろう。

 結婚と恋はちがう

二次元のキャラへの恋というものがある。

二次元でなくともいい。対象が、ドラマなんかに出てくる実在の俳優というケースもあるだろう。もちろん、画面に写ったら二次元だけれど。

“逃げ恥”と『恋』

『恋』(星野源)という楽曲があるなと思った。

たいへん社会に響いた曲で、おとなもこどもも、いろんなところで「恋ダンス」。踊り狂った。(狂ったは語弊があるかもしれない。それくらいに反響が大きかったことを強調する意味で狂ってみた)

私は『逃げ恥』(ドラマ)をまだちゃんと観たことがない。

漫画なら、序盤だけWebで読んだことがある。

公言するのが恥ずかしいとしか思えない程度の、「浅かじり者」まるだしである。

でも、「浅いかじり方」しかしていない者は、対象について口をつぐまなきゃならない世界はおかしい。だから、あえて今日、(よりによって私が)言い及んでみた。この広漠な魅力を放つ超絶有名曲、『恋』に。

『恋』動画

星野源 – 恋 (Official Video)

まあなんと華々しいエンターテイメントなんだろう。

すみずみまで楽しすぎる。

私には、取り上げきれない。

何度、やっぱりやめて『恋』については口をつむごうかと思ったことか(今でも書きながら思っている)。

音楽的なこと

4和音の頻出すること。

「オサレ(おしゃれ)コード」とでもいいたくなる。

星野源のオリジナルレパートリーについて、私の知識は本当にすくないけれど、先にも大変話題になった『うちで踊ろう』を一聴したときにもその「コードづかい」の軽妙さに感服したのは記憶に新しい。これも、星野さんの持ち味のひとつだなと思った。

低音は、順次進行したりあちらこちら跳躍したり、非常にめまぐるしい。

その緻密な低音の設計、そしてコードワークが、重ねて言うけれど軽妙、いや絶妙。音の成層は、入り交じったマーブル模様だ。

それでいて、「ポップミュージック」を著しく逸脱するものではない。4和音を基本にしたやや複雑な色彩だけど、ちゃんと「キャッチ」している。ツボを押さえている。

サビのブルーノート

歌詞 “夫婦を超えていけ” の「超(こ)」のところが、♭している(半音下げている)。これは、普通のメージャースケールの音ではない。調の固有音でないのだ。

既成の「夫婦」という型。それを、メージャースケールの「定型」にたとえてみる。

それを超えていけ。そういう表現なのだと私は解釈してみる。なんて意匠的な設計だろう。

(こういうのを、ブルーノートという。本来は、「固有の音をきっちり半音下げたもの=ブルーノート」ではないらしいんだけど、まぁ便宜上(?)12半音階内での使用が今日、ポップの常套句であり、頻出テクニックになっている。『恋』での星野さんの“超(こ)”の音程も、おおむねこの使い方かと私は思う。)

逸脱? 型破り? 亜流? だれがそんなことを決めた。恋に定型はない。

曲の社会的影響力がはんぱない

Wikipediaなんか見ただけで、ぞっとする。

私の日々のみみっちい音楽ブログなんかでは到底語り尽くせない『恋』の魅力、背景、影響力。

でも、大事なことは「既成概念や定型」と「ブルーノート」による対比に、かなり込められていると思う。

もちろん、ごくわずかな、この曲がきっかけとなって泉のように涌き出る文脈の一端でしかないことには変わりないんだけれど。

むすびに

私は日常という列車の窓に寄りかかって阿呆面している。

長いトンネルを出たかと思ったら、またブラックアウト。

山山をつらぬく、断続するトンネル。

暗くて電波も途絶え途絶えしている。

車中の蛍光灯。人工的な光に気持ちが病む。

また強い光が飛び込んだと思ったら、ふいにすごい景色が現れた。

かと思ったら、見切れた。私はまたトンネルの中だ。

外には、「星野ワールド」。

すんごい世界がまだあった。

細切れの休みをでっちあげて、私は戻ってくるだろう。

青沼詩郎

星野源『恋』(2016年、SPEEDSTAR RECORDS)に寄せて

『恋』を収録したアルバム『POP VIRUS』

リンク

星野源 オフィシャルサイト
https://www.hoshinogen.com/

星野源 – 恋 (Official Video)
https://youtu.be/jhOVibLEDhA

星野源 – 恋(Live at Tokyo Dome 2019)
https://youtu.be/ucR8y5BaLLE

【公式】恋ダンス また火曜日から始めよう/逃げるは恥だが役に立つ
https://youtu.be/Cd5p2KdLhAQ

Wikipedia
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/恋_(星野源の曲)