まえがき
総リスナーの心が弾け飛ぶライブアンセム。
幻の安寧を求めてさまよう旅を続けるようなエモーショナルで疾走感にあふれる曲調、サウンド。
存在、証明、尊厳、自由、矛盾、残像、限界、自意識、超幻想、起死回生、全身全霊……音読みが印象的な、カタい響き、無機質な響き、無情な響きが印象的な単語をたくさん用います。日本語ロックなのだけれど、日本語じゃないかのような響きをまとって私には感じられます。サザンオールスターズが見せるような、英語っぽく聴こえる日本語……的な方向性とはまるで違い、そこがアジカンのサウンドの独特で唯一無二で孤高のキャラクターの一部になっていると思います。
まっすぐに轟くギターの強く鋭くまぶしいサウンドはまるで暗雲を貫くレーザービームです。
「消して」のサビで1オクターブ飛び上がるボーカルメロディにリスナーの私の目から火花が出る思い。脳内の価値観をまさに書き換えて(Rewriteして)しまいます。
リライト ASIAN KUNG-FU GENERATION 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:後藤正文。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのシングル、アルバム『ソルファ』(2004)に収録。アニメ『鋼の錬金術師』オープニングテーマ(第4期、2004.7〜10)。
ASIAN KUNG-FU GENERATION リライト(アルバム『ソルファ』収録)を聴く
一回リスナーの脳みそをとろかしてまっさらに流し去り再構築がそこから始まる……そんな劇薬に思います。価値観消し飛んじゃっても知らないぜ? そんなことを思わせる、矢のような、撞木のような、硫酸だか塩酸のような危険物のようでもあります。
どうやったらこんなに強いギターの音色が作れるのでしょう。右のほうに動きを出す役割、左のほうがストラムで響きや恒久なリズムを出す役割のギターという感じでしょうか。サビに入る前の一瞬、中央付近にアディショナルの3本目のギターらしくトラックがあらわれるなど、メンバーの頭数きっかりの編成を中心にしつつもサウンドメイクに余念がありません。グリグリとアタック感がアブナいキャラのベースが頼れるワル感。まっしぐらなハイハットのエイト、オープンに変わると4分になったりもしますが定規が精密です。そしてキックもベースもギターも全部が一本の超絶ふといパイプになってアジアを世界をつなぐ宇宙最速の光通信媒体これぞアジカンという感じ(もはや語彙崩壊)。
中間部の展開がやはりこのまっしぐらな曲調に変化を入れる秀逸な部分です。厳密にレゲエってわけではないのですが、なぜか私にレゲエを感じさせます。リムでゴーストノートといいますか16分割のグルーブを出す感じとかになんだかスカとかそんなジャンルの音楽の雰囲気も思い出します。
「は!」というかけ声は和物感。そしてこの掛け声にディレイ、こだまがかかる。かかりながら、減衰していく、いえ、しかし減衰はひどく遅い、繰り返し繰り返し脳内に誘惑の言葉をぶちまけながらトロけながら輪郭が崩壊していく、そんな「は!」の音像はいつしか「ほ!」なのか「ぅぉっ」なのかわからない音像になりながらバンドのサウンドがうねくりかえす。スネアにも局所的に強烈なディレイがかかります。
挑戦的な態度が全面に出ている。これで終わりでない。何で書き換えるのか? ずっとその最中であり、書き換えの繰り返しこそが挑戦の証明である。何度でも馬鹿になって、それを書き換えればいいのです。安心して無茶苦茶にしてやればいいのさ。
青沼詩郎
参考Wikipedia>リライト (ASIAN KUNG-FU GENERATIONの曲)
ASIAN KUNG-FU GENERATION 公式サイトへのリンク
『リライト』を収録したASIAN KUNG-FU GENERATIONのアルバム『ソルファ』(2004)