Runner 爆風スランプ
作詞:サンプラザ中野、作曲:Newファンキー末吉。爆風スランプのシングル、アルバム『HIGH LANDER』(1988)に収録。
爆風スランプ Runner(アルバム『HIGH LANDER』収録)を聴く
直線的なイメージを強く印象づけます。“走る走る 俺たち”の歌詞の通り、ランニングのお供に最高の伴走者になってくれることうけあい。
ドラミングのキックが細かく、ベースもよく動きます。直線的なイメージを強く与えるのですが、緻密で多動なフレーズの反復で直線的なイメージを成しているので運動量は相当なものです。そう、シンプルに見えて情報量が多い。何度でも聴けるし、いつまでたっても聴けるこの楽曲の特長でしょう。
シンセの類が良い仕事をしています。きらきらした壮麗なサウンドはシンセのみに務まる役割。ストリングスの音色もランナーの背中を押します。ずばりランナーはサンプラザ中野くんのリードボーカルでしょう。太くコシのある歌唱。エネルギッシュです。ツヤがあってギラギラしています。あぶらが滾っています。稀有なシンガーです。
サビのギターは案外チャカチャカしていてかろやかなサウンド。刻みが細かくタイトで、速いテンポの中でアップストロークすなわちウラ拍のアクセントが効いています。
歌詞のないところ、ソロでは伸びやかなサウンド、そしてハーモニックな音づかいで耳をリードします。これも名曲“ランナー”のイメージの占める部分でしょう。
サウンド全体、上空がすっきりした印象をうけます。ドラムのキック、よく動き続けるベースが地面の近くをずっと軌道を描いていく。耳に痛くないのです。80年代後半……この時代特有のバンドサウンドの典型という気もしますがそれ以上のものが『Runner』には凝結しています。鬼リピに耐える結晶体です。
半音下げチューニングにしたギターを使えばメロがEm、サビがAmポジションを活かして演奏できるキー設定が絶妙です。メロ・サビの間で近親調(属調や下属調)への転調をするのは、なんだかクラシック音楽みたいで非常に機能的で構造美がありますし、音楽のセンスが高い。イントロやエンディングを印象づけるサスフォーのコードも活きている。こんなに直線的で肉体的でシンプルな印象をつよく打ち出す楽曲なのですが、理屈をこねる私には非常にクレバーで頭のイイ曲にも思えるのです。この曲が数十年に及ぶ持久走に耐える理由だと一人合点しています。これは本当にすごい曲。1988年リリースですが、40年の持久走も間違いなく達成する名曲です。
青沼詩郎
X アカウント 爆風スランプ INFO 2024年夏ごろから、何やら爆風スランプに動きが。デビュー40周年の彼らです(デビュー年が1984年とのこと)。
『Runner』を収録した爆風スランプのアルバム『HIGH LANDER』(1988)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Runner(爆風スランプの曲)ギター弾き語り』)