流星都市 小坂忠 曲の名義、発表の概要
作詞:松本隆、作曲:細野晴臣。小坂忠のアルバム『HORO』(1975)に収録。
小坂忠 流星都市を聴く
歌がうまい。これ発表されたとき何歳くらいなんだろうと思ってWikipediaなどみると1948年生まれでいらっしゃるので27歳。確かに音楽に身を捧げて没頭して生きてくればこれくらいの歌が歌えるのは不思議ではないのかもしれませんが……彼が何歳だとかいうことを別にして何年経っても永遠の音楽として味わえます。森山良子さんの歌唱もタイムレスな感じがするのでふと思い出しました。
そして演奏も何から何までいい。オルガンの広がりがすごいです。右のほうからクワァーっとエッジのある音が。左のほうからはストリングスにも似た、地面をはうような厚みをもった音が耳を抱擁してきます。
ベースの質量あるサウンドが良いですね。どんな楽器、機材をつかって、どんな指が弾いているのでしょう。質量があるのに、あたたかくて、輪郭もあって、線がはっきり感じられます。ぐもぉんとしているのじゃない。フレージングのストップアンドゴーの機微の良さもあいまってサウンド自体が良いと感じるのでしょうか。
ドラムスの16のハイハットが忙しそうだと思うのに、さも朝飯前のようにさばきます。全部ダウンで16を打っているのかな。オープンのときにこまぎれに一瞬休めるので全部片手のシングルストロークかもしれません。ブレイクしてエレクトリックピアノがかけがっていくようなところでも、ウラのタムなんかが緻密に決まっています。なんだこの集団は。どえらいテクニックです。えぐい!
ボーカルがリードのみで、化粧のバッキングのボーカル、コーラスの類がありません。君にロマンの吐息を甘くかけるだけの、君のためだけの秘密の愛の歌という感じがします。
それでいて朗々とした歌唱です。天にそのまま通電できそうな純度。うらやましいとかそういう邪な雑念を起こさせない敬虔な歌声なのです。芯が、魂がはっきりしています。
流星都市とは。モチーフ・主題の意味するところはなんなのでしょう。
人のいのちは儚いものです。都市を横切って、次の世代にとってかわってしまう。命の刹那で儚いところが流星のモチーフに重なります。あるいは恋のはかなさでもあるのかもしれません。君と過ごす甘い夜も、またたく間に明けてしまうことを比喩した流星なのかもしれません。甘美な純心です。
青沼詩郎
『流星都市』を収録した小坂忠のアルバム『HORO(ほうろう)』(1975)。2010年の全曲ボーカル再録バージョンとセットの40周年記念バージョンがある。