戦国無双というプレステのゲーム
戦国無双というゲームにはずいぶんとはまりました。それよりも前に中国地域の魏・呉・蜀の戦いを主題にした真・三國無双というゲームがありました。それが転じて、日本の戦国時代バージョン!という経緯(?)で登場したのが戦国無双だったと記憶しています。
戦国無双はそのタイトル通り、日本の戦国時代の戦をテーマにしたアクションゲームです。歴史上の実際の戦や実在の武将(をモチーフにしたキャラ)が出てきて大合戦するのです。無事に逃げ切ることをミッションとした敗走戦とか、逆の立場で逃げ延びようとする相手を討つといったようにそれぞれの武将の立場で実在した「戦」をシミュレーション・プレイできるのです。
武将、しゃべる、しゃべる。声優さんが声を吹き込んでいるのでしゃべるのです。そしてプレイヤーのコントローラーの操作に応じて、武将、あばれる、あばれる。もう大暴れでそれこそ「無双」なのです。「無双」って、現代の漫画とかアニメのシーンでも「最強(敵なし)」的な状態を指すちょっとしたミームな言葉になっているかと思いますがその流れをつくったのがこの戦国無双や三國無双のゲームじゃないかなと私は思います。
武将、カッコイイ。逐一カッコイイ。美形だったり勇猛で濃ゆい肉厚なキャラクターデザインになっていたりします。なんなら美女も出てきます。戦場に不似合いでしょうか。
「戦国無双」があったから、わずかながら、私は日本の実在した武将へアクセスする知識を得ることができたのです。もちろんゲームはゲームです。実物があんな美形であったり、美声であったりするわきゃぁないし、ゲームの中のような性格だった・人柄だったわけではなくそれはあくまで創作です。それはわかっているとしても、その実在した武将に親しみを持つことができているわけです。真田幸村ときけば、「アイツか!」と、ゲームに登場した「オヤカタサマ」に激熱なキャラが私の頭に浮かぶのです。ゲームの功罪でしょうか? でもとにかく、私に日本史にアクセスするきっかけをくれているのは間違いありません。
話は変わりますが明智光秀を扱った漫画『信長を殺した男』にもはまりましたし、それもやっぱり戦国無双に出てきた「アイツか!」が接点をくれているところがあると思うのです。
レキシこと池田貴史さんが『きらきら武士』とか『真田記念日』とかを歌うのに沿って、歴史に親しんでいっしょに楽しくネタにしたり真面目に話のタネにしたいという気が起きるのは、ゲームの「無双」シリーズが私にくれたギフトかもしれません。学校の授業ではミリすら親しみをもつきっかけが得られなかった私です……。
真田記念日 レキシ 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:池田貴史。レキシのアルバム『レキシ』(2007)に収録。
レキシ 真田記念日を聴く
私は最初、中村一義さん(レキシネーム:Dr.コバン)さんをフィーチャリングしていることに気づかずに聴いてしまいました。それくらい、なんといいますかレキシこと池田さんの世界(サウンド)にすべてを見事にフィーチャーし、コミットさせているのです。
ああそうか、中村一義さんフィーチャーかという意識で聴けば、この独特の張り付く粘度感と澄んだ声色はいかにも中村一義さんのそれです。なのですが、見事レキシという池田さんのプロジェクトのピースにはまっている。中村一義さんなのですが、見事に「Dr.コバン」に成っているのです。将棋のコマみたいに、普段のご本人名義が裏返るとレキシの一員になるのです。豪華なミュージシャンを数多フィーチャーするプロジェクトがレキシですが、そのどれもが見事に「レキシ」というエンターテイメントになっているのです(私もレキシネーム欲しい)。
コーラス(サビ)で池田さんのファットな歌声が炸裂します。バックグラウンドボーカルのほうに「フゥー」といった協調をみせる声色を描き込むのが中村一義さんでしょうか。
左右からエレキギターが尾鰭の長いフレーズを浮かべます。フェンダー系のギターを想起させる、繊細さとキレのよさを併せた質感のトーンです。エレキギターの演奏はひょっとして中村一義さん?
ベースがオクターブを上下します。ずぶとく、ローの伸びが気持ち良いサウンドです。ドラムスのキックが4つ打ちになるとますます筋力をましてずんずんと戦場を闊歩していきます。
全体に海苔波形を思わせるミッチリ詰まった音圧感ですが、定位を感じやすいヘッドフォンで聴くと定位のセパレーションと調和の塩梅も気持ち良いです。エレキギターの背中をおすピアノのストローク。「ポッポッポッポっ……」というのか「ピコピコ」とでもいうのか、シンセの電子的なサウンドに愛嬌とまるっこさがあります。
エンディングの歌詞“I’m looking for you”は……大阪夏の陣か冬の陣の「sanada」目線の戦況を表現しているのでしょうか。あれほど「戦国無双」でプレイしたのに、やっぱりそれぞれの勢力の状況とか戦の概要とかなんにも私には浮かびません。やっぱりゲームで遊ぶだけでは正しい史実を知るには満たず、きっかけを得たらその先の知見を己の意思で求めないといけないわけです。我ながら情けなし。
「レキシ」的にも夏と冬の陣があってわかんなくなっちゃう歌。夏の陣だったか冬の陣だったかわかんなくなっちゃう現象こそがこの楽曲『真田記念日』の主題なのです。そこを主題にして素直に「わかんなくなってno no no……」って歌っている。もうアホすぎるじゃないですか(褒めてますスミマセン)……。愛です。レキシ(歴史)は愛。
七月六日の「サラダ記念日」はダジャレにフィーチャーされただけではなはだ無関係なのでは。それともsanada的に、何か大阪夏の陣や冬の陣いえ、やっぱり「そうさ夏の陣」のほうと何かしら縁のある日付なのでしょうか。歴史に疎い私も分かんなくなってno no no no no no no……
青沼詩郎
『真田記念日』を収録したレキシのアルバム『レキシ』(2007)に収録。
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『真田記念日(レキシの曲)ピアノ弾き語り』)