まえがき
2歳差のあるふたりを描きます。三木聖子さんの発表のち、石川ひとみさんがカバー。写真はたった3枚だとしても幅のある時間、記憶が主人公のなかにあるはず。
三枚の写真 三木聖子 曲の名義、発表の概要
作詞:松本隆、作曲:大野克夫。三木聖子のシングル(1977)。石川ひとみがカバー(編曲:葦沢聖吉)しシングル、アルバム『夢模様』(1981)に収録される。
石川ひとみによるカバー 三枚の写真(アルバム『夢模様』収録)を聴く
石川さんの歌唱が非常に緻密です。朗々としているかと思えば哀愁をまとう表現の幅に刮目させられます。子音が極めて綺麗で美しい。しゃくりあげるなどのポルタメントするカーブを経て正しいピッチに至るタイム感の気持ちよさ、なめらかさ、スムースさ。オリジナルリリースの三木聖子さんの歌唱の根強いファンも世には多いのかもしれませんが、石川さんは石川さんらしい高みがあり改めて惚れ惚れ、感嘆する歌唱です。旋律のラインが太くなったり細くなったりインク・墨が細かく飛び散り迸ったりしつつもはっきりと一本の線がつながっている。そんな印象を思わせる、非常に好感度の高い歌唱です。
編曲・演奏がまた良いですね。左右にギター。コーラスがかかったような、あるいは12弦のギターが含まれているようなきらびやかなハナのある音色のギター。アルペジオで流麗な印象に与します。ストリングスのダイナミス、震えるようなアルコの情熱的なトレモロ。和声音をのばす、こまかくきざみリズムに資するなど自在かつ品があります。
ベースラインが細かいのに目をみはります。これまた自在、かつ生き馬の目を抜くような精密さでおもむろに分割の細かい装飾的・経過的な音程をはさんでくる闊達ぶり。ドラムのふとしたタムやライドの分割もベースと協調するように緻密です。クラヴェスなどのまろやかなアクセント、タンバリンの16分割などパーカッション類も盛り上げます。
ストリングスとユニゾンするピアノの旋律が優雅です。
2歳差のある主人公とあなたの時間の幅を描きますが、写真はたった3枚だけとくくる寂寥と絢爛で的確でリッチなサウンドの落差にキュンと来るすばらしい実演が詰まっています。
三木聖子さんのオリジナルはサブスク未配信のもよう。おのおのの方法で手繰って聴いてみてください。サブスク配信等のある石川さんのカバーがこの作品への容易なアクセスをくれると同時に、オリジナルと遜色ない価値をくれます。
青沼詩郎
『三枚の写真』を収録した石川ひとみのアルバム『夢模様』(1981)
『三枚の写真』を収録した三木聖子のベストアルバム『お元気ですか? 三木聖子 with love』(1982)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】点をつなぐ線 三枚の写真(三木聖子の曲)ギター弾き語り』)