恋の競争
あなたの友達が好意を寄せている人のことを、あなた自身も好きになってしまったらどうしますか。その前に、あなたが好意を寄せている人のことを、あなたの友達のほうが目をつけてくるかもしれません。
魅力的な人というのは魅力的なもので(重ねる意味なし)、複数の人の好意をひいてしまうことがままあるでしょう。
一方で世の中というのはうまくできていて、あの人を好きになる人もいればこの人を好きなる人もいるのです。ヒトは多様ですから、多様な人ひとりひとりと合う人もまた、決してその数が多くなくともどこかにやっぱりいるのです。「ええ、あの人のどこがいいの?!」と誰かに思われるような人でも、パートナーとうまくやっている人がごまんといるではありませんか。
それでもやっぱり、より多くの人と好ましい関係を保てる高い可能性をもつ気質・性質の人もいるでしょう。そういう人は人気をあつめてしまうかもしれません。
そんなに多くの人と良好な関係を保てる気質や能力があっても、結局ほんとうに実際の生活をともにできるパートナーの数というのは限られます。結婚と離婚を複数回する人もいるので、人生の時期によってそれを分割している人も、本人がそう強く望んでか望まずかは別としてあるでしょう。なんだか話が思わぬ方へ行ってしまいました。
結局は、相手があってのことなので、友達と同じ人を好きになろうが、相手のほうがあなたのことをいいと思うか、友達のほうをいいと思うかによるはずです。
では、相手方が、あなたもいいし友達もいいので両方とつきあいます!とか言い出したら……? あなたか友達のどちらかが幻滅して身をひけば円満でしょうか? そんな人を最初から好きならない? ならばこの世の修羅場の数はもういくぶん少なくて済むのじゃないか? 私はなんの話をしているのでしょう。全部想像ですよ。私の話じゃありません。
やまだかつてないWink さよならだけどさよならじゃない 曲の名義、発表の概要
作詞:山田邦子、作曲:KAN。やまだかつてないWinkのシングル、アルバム『やまだかつてないCD』(1991)に収録。
さよならだけどさよならじゃないを聴く
ふたりの、まったくキャラの違うボーカル(なんならビジュアル込みの外付けイメージを含めて)の共闘がすごくいいですね。横山知枝さんの声は甘くて儚げでとても魅力があります。山田邦子さんはピンと通る声がさすがタレントさんの貫禄。マルチな方ですね。
間奏のせりふがこの楽曲がオンナの友情ソングであるのを印象づけます。でもこのせりふはさておけば、春の、出会いと別れの季節におあつらえむき。未来をのぞんで、決別を一時的で向上のためのもののように捉えているように感じる、ポジティブで爽やかで気持ちの良い楽曲です。すごく出来がよくて、同性デュエットソングとしても重宝されそうですね。上司と部下とかでも歌えそう。知らんけど……
オケはダイナミクス感が非常に安定しています。打ち込み主体のサウンドかもしれません。“ネェ ネェ ネェ”のところの和声のわびさび感が非常に景色をがらっとかえてくれて、ビート感までがらっと変わったような錯覚がするほどです。
語りかけたり、うなずいたり……言葉の意味としてはほぼ何も描いていないようにみえて、じつはネェとかウンとかソゥとかで、ふたりの関係を見事に描いている。ネェとかウンとソゥだけで!! 日々頭をひねって全霊を注いで作詞に勤しんでいる専門の方々、驚愕ではないでしょうか。もういっかい言わせてください、ネェとかウンとかソゥでこれほど友情や関係を想像させてしまうのです!!(しつこい)もうアーとかウーとかで全部歌っても伝わるんじゃないか。それはないか。
“もしもだけれど 大きなそのミ いつかとばした スイカの種 ここを歩けば 君を想うよ 小さな二葉 あちらこちらに きっときっと ここで会おうよ”
(『さよならだけどさよならじゃない』より、作詞:山田邦子)
なんだか、本人にとってはさらっとやってのける何気ない日々の挙動なのだけれど、実は他人から見るとかなりすごいことを地道に積み重ねている……そんなことが、いつのまにかちょっとずつ芽を出しはじめて、あたりに希望を思わせる緑色の輝きをいっぱいに散りばめ出した……そんな報われる景色を私に想像させてグっと来る歌詞が好きな部分です。
スイカの種を飛ばすのが地道な努力に重なるはちょっと私の感性がオカシいかもしれませんが……あるいは、スイカの種をとばすような、「なにをやってんだぃ」「おふざけがすぎるよ」と、理性の権化にたしなめられるような行動でも、実は何か大きな成果をもたらすきっかけをまく天真爛漫なアクションなのではないかと私に希望をくれるのです。
天真爛漫なんかじゃなくて単にお行儀がわるいだけ? だとしたら、お行儀のいいおこないだけで人生を満たすなんてゴメンだね!!
青沼詩郎
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やまだかつてないWinkの『さよならだけどさよならじゃない』を収録したアルバム『やまだかつてないCD』(1991)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『さよならだけどさよならじゃない(やまだかつてないWinkの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)