さよならの夏 森山良子 曲の名義、発表の概要
作詞:万里村ゆき子、作曲:坂田晃一。森山良子が歌ったテレビドラマ『さよならの夏』(1976年、よみうり・日本テレビ)主題歌。森山良子のシングル。
森山良子 さよならの夏を聴く
端正で確かで麗しくて潤い豊かな歌唱にため息がでます。ソングライターであり、歌手である……「シンガーソングライター」と称してしまっては森山さんの純然たる歌手としての凄味をあと一寸のところで表現しきれないのではないか。それくらいに古今東西に幅の利く器量を思います。
こういうシンガーって不世出ではないでしょうか。なかなかいないと思うんです。たとえば宇多田ヒカルさんとかは森山さんより後の世代に出た、1986年生まれの私(筆者)が10代くらいの頃に出てきた歌手として圧倒的な存在感を放つ筆頭であり象徴的が歌手だと思いますが、森山さんの放つ歌唱とは歌の凄さのベクトルがだいぶ違います。
悪くいえば、新人〜中堅時代の森山さんは若いくせに貫禄がありすぎるのかもしれません。あえて悪くいいました、恐縮です、すみません。
ゼロ歳から三途の河を渡るまでのあらゆる老若男女と一緒に共有できる思念としての「歌」。それを森山さんは開陳していると思うのです。その時代に、閃光のようにあらわれて、若い世代を気絶させるような類の才能とは「幅」の感覚が違います。「帯」や「面」、あるいはその集積としての物量・質量を思わせる「歌」。歌は思念なのです。
アニメ映画『コクリコ坂から』の主題歌として2011年にカバーされます。30年〜40年経とうとも今日の歌として再解釈しうる。それだけ未来の唇に普遍として宿るとは脅威で、それは作詞作曲の万里村ゆき子さん・坂田晃一さんに払うべき敬意かもしれませんが、森山さんが魂を注いだ歌唱の記録にいまこうしてふれてこれだけの瑞々しさを覚えることにひとり私は驚愕しています。あなたにも今一度ぜひ聴いてみてほしいです。
青沼詩郎
テレビドラマの主題歌として生まれた曲のカバーがアニメ映画『コクリコ坂から』の主題歌に。主題歌 to 主題歌という楽曲のキャリア、すごいな。
『さよならの夏』を収録した『森山良子 TWIN BEST』(2007)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『さよならの夏(森山良子の曲)ギター弾き語り』)