そばにいるから THE HIGH-LOWS 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:甲本ヒロト・真島昌利。THE HIGH-LOWSのシングル『胸がドキドキ』(1996)収録。ベストアルバム『flip flop』(2001)に収録。
THE HIGH-LOWS そばにいるから(ベストアルバム『flip flop』CD)を聴く
ダブルが基本のリードボーカルのサウンド。ホフディランの『スマイル』なんかを思い出すサウンドです。こんなサウンドもあるのですね、ハイロウズ。ダイアトニックコードが印象的なのはおなじみではあります。
ドラムが右に定位しているのが面白い。こういうミックスもやるのですね。彼らの作品ではこんな定位のものには初めて出会いました。私が知らないだけでもっとあるのでしょうか。
リン、と深く広い音色で鈴が鳴ります。ギーチチ……とギロでしょうか。チャカチャカチャカ……とトレモロするのはマンドリン? ドラムが右よりなぶん、空間ににぎやかなキャラがいろいろ愛嬌をもって顔をだします。
こんこんとピアノのストロークが魂柱。チャキっとした音はアコギでしょうか。ボトルネックだかスライド奏法のエレキギターがマイルドで優しげに線を引きます。
ウー、アーと、コーラスが定位や音色を多様に顔をだします。
ぽーぷー、とリコーダーが素朴。オルガンもいるでしょうか。
「歩き出した」……とフレーズを結んで、長いエンディング、フェードアウト。ぼうっと未来に想像をふけらせます。
メロの出だし。G→Bm→と来て「F」が歯が浮くような意外性があって良いです。スウィートなだけじゃない。すいも甘いもあるのです。それと折り合ったり、対立してぶっ飛ばしたり、たまたま波長が合ったり。悲喜こもごもが彼らの音楽にはあります。ありのままに、率直に映り、まっすぐ天に向かってスクリと立つ潔さと哀愁があります。
意地悪な王様が 二人のじゃまをしても 君を一人ぼっちには させやしない
『そばにいるから』より、作詞:甲本ヒロト・真島昌利
王様は観念の権化です。私の住む文化圏、日本に実際に「王様」がいるわけじゃない。でも、そこいらに「王様」的なものは蔓延っているわけです。うえからなにか言ってくる。強いてくる。圧力をかける。こちらの意向をつぶしにくる。私の自由を奪いにくる。道を先回りして閉ざしてきやがる。いろんな王様が……「王様」的なものと私は戦っていかなければならないのです。
もしも夜が明けて 僕たちが自由なら 他には何ひとつ 無くてもかまわない
『そばにいるから』より、作詞:甲本ヒロト・真島昌利
もしもと仮定して話を始めます。現実はそうじゃないから、仮定を念頭にしているのでしょうか。あるいは、現実はまったくそうじゃないともいいきれない。もちろん、僕も君も、自由なのです。そのはずなのです。だけれど、いろんなことがあります。ぶっ飛ばして、戦っていかなけりゃいけないときがあるよ。
背伸びするだけで 届きそうな夜空の星
『そばにいるから』より、作詞:甲本ヒロト・真島昌利
これがあるから、私は生きる希望を持ち続けていられるのかもしれません。ちょっとがんばればとどきそうな目標のつみかさねの先に、大きな理想があります。
してはいけないと 禁じられてばっかりだけど
『そばにいるから』より、作詞:甲本ヒロト・真島昌利
禁じられているように、一見みえるけれども実は自由だということも多いです。やってはいけないという論理の絶対性を信じすぎていることが私にはあります。少し疑ったほうが良いこともあるのです。それは、君が思うほど絶対的なことじゃないんだよと。
空が曇ってきても 僕がそばにいるから 君だけに青空を 見せてあげる
『そばにいるから』より、作詞:甲本ヒロト・真島昌利
たとえばSNSみたいな場所で、いかなる人にも反論させないようなことを言うのはほとんど無理でしょう。同時に、それほどに、多くの人にそもそも注目されたり届くこともないことがほとんどです。バズるツイートが一個あれば、バスらないツイート(今は、ポストか。)はいったいいくつある? ほとんどが後者でしょう。それはさておき。
誰にでも正しいことはないのです。でも、君だけにそっと、「ほら、こんな手だってあるよ。君が必要だと思うなら、伸ばせばいい。その手をとればいいんだよ」と言っている気がします。
禁じられていると思えること。一見そうでも、実は絶対じゃない。曇っているように見えても、それはここから見上げている限りはそりゃそうなんだけれど、その雲のむこうには青空があるのです。ここから見る限りは雲がじゃまして青空なんかありゃしない。ここから見えないものは、絶対ないんだと信じ込んでしまう。でも、そうじゃない。ありもしない不自由に、自由を奪われる幻想なんか僕が晴らしてやるよ。
青沼詩郎
『そばにいるから』を収録したTHE HIGH LOWSのベストアルバム『flip flop』(2001)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『そばにいるから(THE HIGH-LOWSの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)