サウスポー ピンク・レディー 曲の名義、発表の概要
作詞:阿久悠、作曲・編曲:都倉俊一。ピンク・レディーのシングル(1978)に収録。
ピンク・レディー サウスポーを聴く
この強烈にヘンな曲をつくったのはどこのどいつだ。あまりの独創性的クセつよ具合にイラつかされるほどの衝撃。作曲は笑顔の歌ウマ美声紳士の都倉俊一さんでした。阿久悠さんの作詞とのコンビでピンク・レディーに提供しているのは『ペッパー警部』『渚のシンドバッド』『UFO』など枚挙に暇がありません。
和声の緩急がすごいですね。BPM=175前後くらいの速いテンポですが、四分音符1拍単位で和声をこまごまと切り刻むように変化させる部分を設けるなど演奏者は忙しくて大変です。
左サイドにトントントントン……とかろやかなブリッジミュートのエレキギター、右サイドにンッチャ、ンッチャ、ンッチャ……と裏拍を強調するタンバリンが振られて双璧をなします。ベースは4分音符で根音と5度音をズンズンと杭していき、ドラムも逐一裏拍をスネアで強調していくバイテン(倍のテンポ)が基本みたくなっています。構成の流れに合わせてパターンに変化がつくので絢爛極まる。
分担して細かい刻みとバクバク心臓がはちきれそうな疾走感をなすベーシックリズムに対してストリングスの伸びが対比をつけます。かと思えばフィルインではこの速いテンポのなか16分の刻みでマウンドのピッチャーがほこりを舞いあげるような微塵切りのアルコをみせます。チェロのまるで歪んだエレキギターみたいな伸びるトーンが精神的にロックです。
コツンコツンと木琴の余韻のふくよかさと楽器特有の余韻の短さがモチーフを的確に伝えます。余韻があるのにタイトなのです。音階打楽器のなかでも木琴だけが持つ、ほかの楽器では代替不可のキャラクターってあると思います。つまり私は木琴が好きだー!
ピミョーーンと人工的なシンセサイザーが表現するのは魔球のモーションでしょうか。またシモンズというエレクトリックドラムの名器があるそうですが(それかどうか定かでないですが)「ポンポンポン」とフィルインし、一瞬ですが圧倒的な印象を残して楽曲の転換点にバッサリとカットを入れます。70年代後半くらいの歌ものの大衆音楽によく聴くようになるシンセサイザーの類の人工的なサウンドは特有のウザ可愛さ、ならぬウザ安っぽさみたいなのがあります。ホメてる要素がまったくなくなってしまいましたがホメているつもりです。それくらいに、一瞬でも鳴らされるやいなや鑑賞者の注意を掻っ攫っていくゲームチェンジャーなサウンドなのです。一世を風靡する魔の器となるのも納得の存在でしょう。
主人公は魔球を投げ込むピッチャー、お相手はバッターボックスの様相です。恋仲なのか因縁の敵なのか。たとえば結婚は協力する仲間としてのパートナー同士になることです。恋愛は、かけひきしたり対立したり、モーションを仕掛けることのやりあいであったり、かならずしも協力関係というものではないかもしれません。仲良くしたいのか、相手を征服したいのか。恋愛って難儀なものです。
青沼詩郎
参考Wikipedia>サウスポー (ピンク・レディーの曲)
ピンク・レディー『サウスポー』を収録した『ピンク・レディー ~TWIN BEST』(1995)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『サウスポー(ピンク・レディーの曲)ギター弾き語り』)