新年に着火剤 Start Me Up The Rolling Stones

ロックリフ名選、この曲で間違いないでしょう。本曲の発表年は1981年ですが、1976年のアルバム『Black And Blue』のセッション時に生まれたキースのリフが元になっているそうです。

本曲を収録したアルバム『Tatto You』はバンドのセッションのストック、未発表のアイディア(お蔵入り)的なものを活用して作られた趣向だといいます。かといってバンドのキャリアのなかで、オリジナルアルバムとしての創造性が比較的弱いものになるのか? というとどうかわかりませんが、少なくとも私は聴いていて楽しいですしこの楽曲・このリフがまるで80年代のロックの「顔」と解釈して恥じないほど浸透し恒久的なものとして結果を残していると思えます。

くだんのリフのイントロはサスペンデッドフォースのコードの響きと半拍ぶん食った(一瞬早く飛び出した)アウフタクトが特徴です。このイントロリフを基調にしたギターのリズムと、ところどころのリードボーカルの強起(強拍からきっかりはじまるフレーズ)あるいはギターのリズムが前に飛び出しているのに対して一瞬遅らせてからボーカルフレーズがはじまる弱起などが絡み合いバチバチと火花を散らすよう。モチーフの特徴や楽曲の構造自体は単純なのに延々と聴くに耐える強靭な享楽性を帯びているところが発明であり革新であり、彼ららしいテクスチャーそのものなのです。その人たちらしいことをやって、それが世の中に響くのはごく自然にあらわれる奇跡的な空模様の神秘のようです。

結局は表層から一片一片装飾を剥がしていき、もうこれ以上剥がすものはないというところまで来たときに自分たちに残るもの、もうこれしかやれないというものが一番強いのだと、このローリングストーンズの象徴的な1曲を鑑賞すると率直に実感します。ご本人たちにその意識があるかどうかは別の話ですが、私の思う「ストーンズっぽさ」がこの曲には確かにあるのです。

『Start Me Up』の主題が、私のケツを蹴っ飛ばして新しい年を野趣溢れ急進的なものたらしめるよう景気付けてくれます。何度でも旅に出ようぜ、というモチベーションが湧くのです。

Start Me Up The Rolling Stones 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Jaggar-Richards。The Rolling Stonesのシングル、アルバム『Tattoo You(刺青の男)』(1981)に収録。

The Rolling Stones Start Me Up(アルバム『Tattoo You(刺青の男)』収録)を聴く

みずからピエロを買って出ているというか、ゴメンナサイ、極端で問題のある物言いをあえてしますが、ストーンズって、知性低めのアティテュードを進んでやっているみたいな表層の質感がある気がするんです。

対してビートルズはどうでしょう、ジョージ・マーティンの力添えもあってか、クラシカルな手法や感性の洗礼を受けたアプローチをときに感じるせいか、幼い頃からピアノを学んで育った私が先に興味を持ったのは正直ビートルズのほうに分があるんです。

しかしきょうび、ここへ来ていまこの瞬間に聴くストーンズのサウンドに寄せる私の感嘆を表現するなら、上段で述べたように、自分たちが表層的にどう見られているのかをある程度分かったうえで、それを包摂してお前らをみんな楽しませてやるよという、リスナー(少なくとも、ある日までの私)よりも一枚上手の優越と、大衆と手を繋ぐ寛大なエネルギーを感じるのです。そこが潔くて気持ちが良いのです。

右にはメインのハナのあるギター。ただ歪んでいるだけじゃない、空間系のエフェクトが作用した輪郭が80年代っぽい。左にはサブでリズムと倍音の響き感、ボルテージの底上げ感を担うエレキギターが別で入っています。そして中央付近からもオブリガードで、鋭い音色かつこれまた空間系のエフェクトの効いた感じのエレキギターを感じます。少なくとも3本のギターが中央と左右に渡って掛け合っています。

ドラムのキックのゴム、ゴム……という質感にキャラクターがあります。4つ打ちのキックでぐいぐいと私の心臓の鼓動をリードします。スネアのサウンドもバス!ザス!なんと表記していいやら、幅と轟のある音色です。暴れん坊でやんちゃなフロントのボーカルやらギターを載せるのに、この笑顔の紳士のドラミングがこのバンドにはなくてはなりません。

ベースの音色はみっちりとした、筋肉の引き締まったようなタイトな質感があります。低域をマスクしてしまうような質量感ではないので、キックとの棲み分けがばっちりで気持ちよく、描線が私を野生、本能の線路に乗せて運びます。

ガナるような、その大きな口ですべてをのみこむようなボーカルが野太い声で叫びあげます。メインのギターリフの縦横無尽なオルタネイトのリズムと絡み合います。そしてコーラスではボーカルが群像の描線に変わります。タイトなヴァースとの音像のメリハリが快楽です。

リズムがタイトで快楽的ですがそのサウンドは轟くための空間があるのです。音数が飽和しているのでもない。頭数絞ったバンドのメンバーの演奏の音、質感を眺めるための然るべき余白があります。

楽曲の構造が複雑だったり特別なのでもない。パターン自体はシンプル。編成も、あえて引っ掛かりのある言い方をしてしまえばエレキギターを用いたフツーのバンドの編成です。それなのに中毒的な快楽があります。その要因を細かく紐解けば、上段に述べたように、ボーカルやエレキギターのフレーズにおける、波状に絡みあいケンカし火花を散らすようなリズム、ビート、音色や声質の面での質感の鋭さや野太さ、押し寄せる音韻の緩急(それも常に平熱高め)、そしてそれらを総リスナーにすっかりと風通しよく見せるベースやドラムの底の高さにあるように思えます。

でも、究極いえば、もううんちくはいいから。知性とか知らん。メシ食って屁ぇこいて、まぐわりあってブチあがろうぜ。ロックと書いてストーンズと読んで良し。

青沼詩郎

参考Wikipedia>スタート・ミー・アップ刺青の男 (アルバム)

参考歌詞サイト Genius>Start Me Up

The Rolling Stones | Official Websiteへのリンク

『Start Me Up』を収録したThe Rolling Stonesのアルバム『Tattoo You(刺青の男)』(1981)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】 新年に着火剤『Start Me Up(The Rolling Stonesの曲)』ギター弾き語り』)