砂の星 くるり 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:岸田繁。くるりのアルバム『THE WORLD IS MINE』(2002)に収録。
くるり 砂の星を聴く
フタコブラクダのエミリーってなんなのでしょうね。旅の連れ合いだといいます。過酷な砂漠を渡る人が帯同する家畜の「THE・これ」的な生き物がラクダだという気はします。
ヘミョォ〜ン……とずっと大きな周期で揺らぎのある線を引くシンセは大村達身さんが演奏するキーボードのようです。これがずっと保続音を鳴らし曲の雰囲気、性格の手綱を握っているように思います。人工的な質感、フィクション・SF的な世界観です。
それに対して、鳥の声、環境、空気の音が生命感シズる素朴なテクスチャです。シンセの不思議で人工的で科学的な質感と、フィジカルでナチュラルな鳥の鳴き声の対比。珍奇な極端さがコラージュで同居しています。
ズボーンと深い音色のコントラバス、可憐なボーカルのハーモニーの対比がサウンドを豊かに麗しくします。
岸田さんのリードボーカルの、窒息してしまいそうなくらい儚いニュアンスがときに漂う感じ、くるりの初期作『ファンデリア』を聴いたときの感覚を思い出します。
6/8拍子というのか、3連をひとつのまとまりの単位にするラウンド、サークルな観念のリズムをアルバムの最後付近に持ってくるのは近作『感覚は道標』における楽曲『aleha』の存在感と私のなかでどこか重なる・通ずる部分、作風を思わせます。
チコンチコンとグロッケンがきらびやかですがコントラバスの音色とも親和するマイルドで耳にやさしい広りのある衝突と響きです。チャキチャキとクリスピーで輝かしいアコギのアタックと、アタックのすぐうしろについてくる乾いた豊かな弦と胴の響きがマイルドなグロッケンとたわむれます。
エンディングにも環境音のコラージュがあり、オープニング〜本編は鳥の声の印象でナチュラルで森っぽい印象だったのですが、ぐわぁ〜んと低いうなりでよぎるのは飛行機の音でしょうか。砂漠なのか森なのか都市なのか郊外なのか。私をポカンとさせるSF感ある曲想です。
感想のペッケペケのエレキギターのハードなブリッジミュート奏法? が乾いた印象を私にもたらします。この余韻の短いサウンドはバックグラウンドボーカルの伸び、レイヤーの広がりと対比になって楽曲のサウンドに振れ幅をあたえます。
夢のなかの情景を抽出したような独創的な曲想は現実の外みたい。
青沼詩郎
『砂の星』を収録したくるりのアルバム『THE WORLD IS MINE』(2002)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『砂の星(くるりの曲)ウクレレ弾き語りとハーモニカ』)