Sunday Morning The Velvet Underground and Nico 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Lou Reed、John Cale。The Velvet Underground and Nicoのシングル(1966)、The Velvet Undergroundのアルバム『The Velvet Underground and Nico』(1967)に収録。
The Velvet Underground and Nico Sunday Morningを聴く
ちからの抜けたソフトな歌唱と長い長い残響が怪しげです。和音が変わっても、直前の和音やリードボーカルの音程の残響がずっと滞留して現在この瞬間に覆い被さります。
“It’s just wasted years so close behind”
“It’s all the streets you crossed not so long ago”
“Watch out the world’s behind you”
過去を思わせる表現が歌詞に並びます。ついさっき。あるいは自分が経てきてこれまで。己を包含するこの世界すべて。サウンドにはとろけたような残響が深く長くつくところが目立ちますが、一方でボーカルが近い。ヴァースは残響が控えめな気がします。今この瞬間の近さと、past……経験や知覚の引き出しが混交して感じられます。
右のほうからチラチラと可愛らしい音色を光らせる楽器はチェレスタ。グロッケンを鍵盤のインターフェイスで演奏できるみたいな楽器とでもいいましょうか。近い定位にピアノもいますが音量が控えめです。ギターが間奏のソロ以外はおとなしく、ピアノとチェレスタ、それからぽつねんとしたベースが和声とリズムを出します。ドラムは4分のリズムでキックを踏んでいるのか、部屋のベッドで力なく横たわる自分を置いて着実に時間が経過していくみたいに厚顔に沈着に進んでいきます。
ふわふわとずーと漂っている響きがあって、まるでギターのリヴァース音、あるいはメロトロンみたいなアナログ臭の強い音が入っています。弦楽器を弓でこすったみたいな響きだなと思ったら実際ジョン・ケイルによるヴィオラが入っている模様。アタック感・音の立ち上がり感がないのです。チェレスタやベースの拍点を邪魔することなく、ひらひらと揺れるカーテン越しに朝の明かりが差しているみたいです。
恍惚感、陶酔感の強い独特のサウンドが衝撃的です。ビート感やテンポはむしろ「緩い」。サウンドも柔らかい。でもアナログのヒス・ノイズとでもいうのか、独特の高域の「わさわさ」感もあるサウンドがこわいのです。
一直線に確実に死に向かっていくのはすべての命の定めであるのは重々わかっているのですが、このまま今この瞬間と死の瞬間“ゴール”が二次元で衝突してしまうみたいな恐怖感を私は覚えてしまう。
芸術は驚きであり、「なんだこれは?!」との出会いだという側面があります。プロデューサーがアンディ・ウォーホルだというのもこのアルバムの独特のおどろおどろしさの根源なのでしょうか。
日曜の朝は怖い。だってもう明日、月曜じゃないか。なんなら月曜当日の朝よりよっぽどこわいぞ。私のあたまのなかの論理が破綻してしまいそうないかれたサウンドです。
青沼詩郎
参考Wikipedia>日曜の朝、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ (アルバム)
The Velvet Underground ユニバーサルミュージックサイトへのリンク
『Sunday Morning』を収録したThe Velvet Undergroundのアルバム『The Velvet Underground and Nico』(1967)