スージー・Qとは誰か

ローリング・ストーンズ、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルらもカバーしました。

はずむようなグルーヴとメロディにねっとりとした質感と緊迫感があります。

スージー・キューはいとしの女性の象徴でしょうか。

踊りとも関係のあるモチーフなのか、社交ダンスなどで踊られる曲としても同名曲(あくまで別曲として?)があるようです。甲高い音域でチャンチャンと鳴る独特のリズムがそういうダンスに用いられるスタイルなのでしょう。

コンパクトな曲ですがCCRは楽器の演奏で尺を長大化し、ギターの咆哮で魅せます。

Wikipedia(en)をみるに、Dale Hawkinsはバンドメイドのロバート・チャイソンとこの曲を書いたそう(BroadwaterとLewisはロイヤリティの分け前のためのクレジットなようです)。

この曲のインスピレーション元はジュエル・ポーラレコードのオーナーであるLewisの娘だそうで、彼女の名前がスーザンです。

ジェームズ・バートンのギターワークも楽曲の成立に貢献しているがノー・クレジットだとか。

余談ですが、その作家の発表や創作に携わる環境や人間関係ももちろん著作物の成立に寄与する重大要素ではあると思いますが、日本の傾向と違って、直接ソングライティングに参加したわけではない人でもクレジットに加えられる傾向は明らかに外国曲の方が例に富むようです。でもそれを言い始めると最後は「著作者:全人類」みたくなってしまいますね。線の引き方、もっといえばビジネス感覚に国民性が現れるともいえそうです。

Susie Q Dale Hawkins 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Dale Hawkins、Eleanor Broadwater、Stanley Lewis。Dale Hawkinsのシングル(1957)。

Dale Hawkins Susie Q(『Susie Q :Singles As & Bs 1956-60』収録)を聴く

泥臭くノリの絡みつきの質が深いバンドに、リードボーカルが接合。色っぽいんですよね。みちゃいけない闇を見ているような。ネネちゃん(クレヨンしんちゃん)が顔を覆うふりをして指をすかしてしっかり観察しているような。

カン・カン・カン・カカカカカカカカカン……のリフレイン。

余韻の長いカウベルか何かの楽器なのでしょうか。これに2・4拍目のクラップが絡みつきます。肉体性と、家畜を踊らせるみたいな本能の支配性を感じます。なんだか、原始的で、野生的な魅力のあるリズムと響きです。

ブン、ブン、と低いベースの音のはずみ方、ニュアンスが私の骨の髄に訴求します。ドラムスはトリプレットの弾み方のテクスチャを決定づけます。ところによりシンバルをオープンに用い、起伏を演出します。

ギターがまたグルーヴィでベースと協調しています。品の良い協力関係というより、悪ノリコンビです。いい意味でですよ。ギャングっぽいんですよ、このサオモノ兄弟が。ソロ(間奏)になっても、多重録音の時代みたいにアディショナルトラックにギタートラックが増えたりしません。リズムとワイルドでアーシーな響きを全面に出すギターの間奏。演奏人数きっかりの一発録りの質感で音楽が貫徹されます。

CCRのSusie Q(『CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL:CHRONICLE THE 20 GREATESTHITS』収録)

ギターの質感・量感が迫ります。ボーカルが右寄り……かと思ったらのちにラジオボイスみたいにトリムの効いた音質で左側にもあらわれます。スージーが私を翻弄するよ。

リードギターは左。ベースのプレイがかろやかで脱力感、余裕があります。ドラムスはカンカンとライドでオリジナルの雰囲気を映しとりますが「カカカカカカカン……」というところまでのリズムの模写は放棄していますね。2・4拍目でタンバリンが鳴ります。タイコの類のサウンドが太いです。

中盤にさしかかり、左側にバックグラウンドボーカルがウーっ……とあらわれます。なんだかYes(バンド)みたいなコーラスだな。Roundaboutとか。

恒常的にグルーヴが続く長まわしセッションな感じを4分台でフレーミング。オリジナルアルバム『Creedence Clearwater Revival』にもっと長いのが入っています。

5分台にさしかかった以降のギターの歪みとプレイが激しいです。7分台頃からは余白を活かしながら、7分台からどんどん不穏に響きを激化させていき、8分台はドラムを残してカメラを遠ざけていく感じになりドラムもフェイドアウトかと思いきやピタリと止みます。

The Rolling StonesのSusie Q(アルバム『The Rolling Stones No.2』に収録)

タムのズボンと抜けたサウンドが激しい。ギターもきわめて荒々しい。ベースは音の回り込みのなかに深い穴を掘るかのようなサウンドで2拍目ウラ〜3拍目ウラでドライブさせる音形のリフレインで崩壊しそうなくらいにはみ出しそうなワンパクものたちのバンドを統率します。

ン、チャチャ、チャ! とアレンジしたクラップがノリと輪を強調します。

私のなかのストーンズの印象をヤンチャなキャラへと傾けるのを助長します。スージーをとって食わんばかりだよ。

細野晴臣の『Susie-Q』(アルバム『Vu Jà Dé (ヴジャデ)』収録)

キックとベースの音色が深い。アコースティックのベースのようでしょうか。対してカツンとスネアの音色は抜けていますが耳ざわりはマイルドです。スパン!とスリッパでリノリウムの床を叩いたみたいな抜け方です。それにトリラーをうまく絡めて語彙を広げます。

チンチンチチンチ……と、鐘のような音色。これですよ。トリップレットするほどではなく少しハネるというか、モッタリと訛る感じ。和風なグルーヴです。音頭ソウルとでもいうかな。音色もマイルドで絶妙です。

少し左で奥まったようなエレキギターの定位感もまた絶妙で、ちょいワル風なんだけど品がある。ジェントルなんです。

ポコンポコンと、コンガの音色でしょうか。これまたアタックが丸くて角がやわらかい。毛布に鈍器を包んだような配慮のある暴力性という一見矛盾したアブない魅力がサングラス越しの光を投げる感じ。

男前なバンドをジェントルきわめつけな細野さんのボーカルが統率します。あまり前に出てこないけどナイロン系のギターも入っているのかな。バンドの音を接着しています。

文脈のなかにあるのに新しいのです。秀逸なカバー。永続する価値づけ。見習います。

Susie Qの香りがあとを引くよう。

青沼詩郎

参考Wikipedia>Susie Q (song)

参考歌詞サイト Musixmutch>Susie Q

『Susie Q』を収録したDale Hawkinsの『Susie Q :Singles As & Bs 1956-60』(2011)

『CREEDENCE CLEARWATER REVIVAL:CHRONICLE THE 20 GREATESTHITS』(オリジナル発売年:1976)

8分超えの『Susie Q』を収録した『Creedence Clearwater Revival』(1968)

アルバム『The Rolling Stones No.2』(1965)

細野晴臣のアルバム『Vu Jà Dé』(2017)

参考書

『マンガで読むロックの歴史 ビートルズからクイーンまで ロックの発展期がまるごとわかる! 』(DU BOOKS、2021年、著:南武成(ナム・ムソン))。韓国出身の著者で、韓国におけるCCRや楽曲『Susie Q』の影響か伺えます。