馴染みのライブハウスのフロアで聴こえてきたのです。甲本ヒロトさんの歌声で、“死んでくれないか……死んでくれないか……死んでくれないか……” そうそう、この曲。

すてごま THE BLUE HEARTS 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲: 甲本ヒロト。THE BLUE HEARTSのアルバム『STICK OUT』(1993)に収録。

THE BLUE HEARTS すてごま(アルバム『STICK OUT』CD収録)を聴く

ゴトゴトとうなりをあげ地べたを撫でてごろつく戦車を思わせる冒頭のバンドのノイズ風が絶妙です。エンジンがブロブロ云っているような、地鳴りのような、キャラピラが強引に地表の枝や瓦礫を踏み潰していくような……ゴングが鳴る直前の格闘技選手同士のニラミあいのような緊張が漂い、バンドの轟音:楽曲の本隊が突進をはじめます。

ズコンと図太く炸裂するスネアの音がカッコいい。どうやったらこの音が録れるのでしょう。ゲートとかかかっているのかしら、「80s〜90s前半っぽいバンドの音のイメージ」:それらしさの大部分はブルーハーツが築き上げたのじゃないかと思わせます。

うわずったまま離陸してどっか飛んでいってしまいそうなリードボーカルが興奮を撒き散らします。緊密な言葉のリズムが戦闘意欲を誘います。

「ジャッジャッジャッジャッ、ジャジャッジャー!」G,C,Dのスリーコードだけをタイトに鳴らし替えるバンド全員で形成するリフが楽曲の弾頭です。

弾頭の嵐のように振り注ぐフロアタムの雨。戦場は絶望、必死・必殺の緊急事態、危機的状況です。

夢も希望もねぇ、全部ぶっ壊れちまえ。ロックの言葉ってそういうものだとひとり合点してしまいます。

バンドみんなで形成するリフに乗って、ギターソロがあらわれるか……というところですが、ほとんどうなり:ハウリングで信号の流路を飽和させるのに終始・傾倒させる様相です。ギターのハウリングだけをキメて永遠にハァハァ云ってたい……そんな気分にさせます。すてごまにだってなっちゃう。

君 ちょっと行ってくれないか すてごまになってくれないか いざこざにまきこまれて 死んでくれないか

『すてごま』より、作詞:甲本ヒロト

ブルーハーツを聴いているとふと「○×大臣」みたいな人物が顔を出します。権威の象徴。圧力の根源。マウンティング主みたいな何者か。

誰が従ってやるか! と見た目からして反抗するのも安易です。従ったふりをして、よだれを振りまいて突進する狂戦士を演じておきながら心の中で「馬鹿言ってんじゃないよ」と唱え、大臣の視界から消えるや否やトんで(雲隠れして)やるのです。誰が知るかこんな世界!

青沼詩郎

THE BLUE HEARTS 徳間ジャパンコミュニケーションズサイトへのリンク

参考歌詞サイト 歌ネット>すてごま

参考Wikipedia>STICK OUT

『すてごま』を収録したTHE BLUE HEARTSのアルバム『STICK OUT』(1993)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『すてごま(THE BLUE HEARTSの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)