彼と彼女のソネット(『哀しみのアダージョ』)曲の名義、発表の概要

原曲はエルザのシングル『T’en va pas』(1986)。映画『悲しみのヴァイオリン(La femme de ma vie)』(1986年、レジス・ヴァルニエ監督)主題歌として制作される。作詞:Catherine Cohen(カトリーヌ・コーエン)・Regis Wargnier(レジス・ヴァルニエ)、作曲:Romano Musumarra(ロマーノ・ムスマッラ)。原田知世のシングル、アルバム『Schmatz』(1987)に大貫妙子による日本語歌詞のバージョンを収録。大貫妙子のアルバム『A Slice of Life(スライス・オブ・ライフ)』(1987)に大貫妙子バージョンを収録。

大貫妙子 彼と彼女のソネット(『哀しみのアダージョ』大貫妙子による日本語詞)を聴く

優しくて儚いです。オーボエの音色は寂しくて品がある。輪郭がはっきりしているのにふくよかで泣けます。

ハープのアルペジオ風の音色はシンセの類のミュージックキーボードによる演奏でしょうか。

生のピアノの音色もオーボエのように気品があって絢爛で雅です。

ジュンジュンとシンセベースの音がスクエアなビート感。ドラムのトーンはゲートがかかっていていかにも80年代という感じがします。雅で品のある生楽器・クラシカルな楽器、大貫さんのソフトで凛とした歌唱と人工的なドラム&ベースの音が融合して独創的です。後半でクワイアが奥から立ち上がってきて壮麗。3分代の尺でコンパクトにまとまっています。

大貫さんの自作だと思い込みましたが原曲があるのですね。外国曲に日本語詞をつけた。当初は大貫さん自身のオリジナルアルバムのためでなく原田知世さんが歌うための提供としての日本語作詞だった。それのセルフカバーを同年のご自身のオリジナルアルバムにも入れたといういきさつでしょうか。

原田知世さんバージョンの収録された原田さんのオリジナルアルバムは入手が困難そうです。

そもそもエルザによる原曲は、映画『悲しみのヴァイオリン』のための主題歌書き下ろし。監督が作詞に共同名義されています。エルザはこの映画の出演者。なるほど、曲の生い立ちが見えてきました。

エルザのT’en va pas

イントロの悲しみが沈痛で重々しい。ペザンテな感じです。

伸びやかなシンセにピアノのトーン。吐く息多めな感じですがリズムの立ったソフトなエルザの歌唱。

コーラスに入ると音景がガラっと変わります。ヘッドフォンで聴くと別の曲がコラージュされたのかと思うくらいステレオに広がってサウンドが激変。

音楽のいれもの、メディアがCDに代わりだすくらいの時代でしょうか。デジタルが録音媒体になりつつあるのか、独特の描線を感じるサウンドです。少女漫画の作画・背景みたいに細かい。繊細で可憐な感じのサウンドです。

低いところのシンセベースのまるくて深い響きは太くて、繊細なウワモノを乗せる広い器です。エイトのダウンの押し出し感はきわめてスクエア。

大貫さんのサウンドを先に知ったので意外でした。大貫さんによるカバーが、まるで自曲(オリジナル)のようでお見事です。原曲も、聴いてなるほどという感じ。

青沼詩郎

参考Wikipedia>哀しみのアダージョ

参考 J-WID

参考歌詞サイト 歌ネット>彼と彼女のソネット

大貫妙子 公式サイトへのリンク

『彼と彼女のソネット』を収録した大貫妙子のアルバム『A Slice of Life(スライス・オブ・ライフ)』(1987)

原田知世のシングル『T’EN VA PAS』(1994)

エルザが歌う『T’en va pas』を収録した『哀しみのアダージョ 悲しみのヴァイオリン オリジナルサウンドトラック』CD(1994)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『彼と彼女のソネット(“哀しみのアダージョ”。エルザ『T’en va pas』を原曲とした大貫妙子による日本語詞)ピアノ弾き語り』)