まえがき
グループサウンズの人気はすさまじいものだった。1966~1969年ごろの音楽を漁っているとしみじみ思います。当時を覗き見てみたいものです。
人気を象徴する語り種に、オックスというバンドが失神バンドと呼ばれたのがあるでしょう。ローリング・ストーンズのカバー曲『テル・ミー』をステージで演奏し、高揚・陶酔・熱狂していき、しまいには失神する(倒れ込む)というパフォーマンスをしたオックス。いつしか観客までもが失神するようになり、メディアにも失神バンドの烙印を押されることになる、……と。
で、原曲の『テル・ミー』by Rolling Stonesはというと、彼らのファースト・アルバムに収録されていて、当時まだオリジナルソングよりカバー曲が多い構成でした。そんななかで、彼らのキャリアではじめてジャカー・リチャーズ名義がクレジットされた作品が『Tell Me』だとのこと。
Tell Me The Rolling Stones 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Jaggar-Richards。The Rolling Stonesのアルバム『The Rolling Stones』(1964)に収録、シングルカット。
The Rolling Stones Tell Me(アルバム『The Rolling Stones』収録)を聴く
複数のボーカルの線が重なって協調したり、それぞれにフェイクに向かったりします。良くも悪くも非常にラフです。素描そのままの輪郭。同じグループのメンバーであっても、それぞれに戦っているようでもあり、ローリングストーンズというグループのキャラクターをよく表した最初期のレパートリーに思えます。
コーラスの、tell me you’re comin’ ……という同じフレーズをリフレインするところ、またⅠ、Ⅵm、Ⅳ、Ⅴのお決まりのシンプルなコード進行などは、トガったグループのキャラクターでありながらも大衆音楽の作家であろうとしたわすかな歩み寄りの努力や意図を感じるのは私の幻覚でしょうか。たとえばロネッツの『Be My Baby』のような大衆歌としての様式を備えた楽曲に思えます。
イントロの12弦ギターで印象づけますが、曲中にはこのイントロの性格はあまり強調されず。あくまでイントロで印象的に扱います。間奏でやたらアルペジオしているのもこの12弦ギターかしら? とも思いますが動きの多いリードプレイなんかとは違います。リスナーに情報の余白を与えてくれるような間奏です。
ビートのエッジの印象がやや希薄です。スネアのリムショットとタンバリンがピッタリ重なっているのか、あるいはスティックでタンバリンをショットしているのか、カツ!と鋭い衝突音と、テシィッ!という金属のベルの尾を引く幅のある音がアクセントします。良く聴くとキックドラムのサウンドのキャラクタなども聴取できますが、あまり目立つミックスではなく、フィルインでタムなんかがドカドカっと入ってくると注意を引きます。ベースは輪郭が溶けていて、アタック感は引っ込んでいます。ぐもぉっと、漠然と存在していて、質量感を保証する感じです。
アコギのストラミングがたまに主張してきてきらっと光らせます。ブスブスと、スピーカーコーンが破けてしまったみたいな強烈なファズ感あるのはエレキギターなのか。時折サックスの音色かよと思うくらいにブスブスした音色が漂ってきて、ビタースイートな曲調にアクセントを添えます。
青沼詩郎
参考歌詞サイト JOYSOUND>Tell Me (You’re Coming Back)
『Tell Me』を収録したThe Rolling Stonesのアルバム『The Rolling Stones』(1964)