ロマンとブルーズ

明るいような暗いようなブルージーなようなロマンティックなような全部が混在共存しているような思念、思いがエッジのきいたビートサウンドに乗っているところが変わりやすい空模様のようで神秘的。ヒトの恋心ってそういう儚くて刹那のものなのでしょう。

ブリッジのところの狭い音域(長3度くらい)を半音進行を含めてもぞもぞ動くところが恋の様変わりに振り回されてうじうじしている感じが出ています。

コード進行も常に先が読めない展開への高い希求が感じられ、いくら傷つくリスクがあってもヒトは恋しちゃうんだな…というポールのソングライティングらしさの一面を垣間見た気分です。気ままなれない体質がなかなかに乙女チック。

ヴァースのスケッチ例。Dキーではじまって、いきなり全音下行してCのコードに進行します。メロディはおもいっきりブルーノートの典型でブルースフィーリング。ビートルズ臭がプンプンしますね。リードボーカルとメンバーの呼応形式をとり、音楽的な補完関係を構築します。“We said our goodbyes”とポールが叫びあげ、“Ah, the night before”と返すのはジョンの声中心でしょうか。バンドっていいね。
ブリッジ(…ビートルズの場合はミドル・エイトと呼ぶのでしょうか)のスケッチ例。ナチュラルC~Eくらいのあいだの長3度くらいのあいだの音程を半音の間隔でうろうろ。うじうじしたメロディがいじらしい。Am→D→Gのコード進行で、この部分だけ完全にGメージャーへ転調したような動きです。

The Night Before The Beatles 曲の名義、発表についての概要

作詞・作曲: Lennon-McCartney。The Beatlesのアルバム『Help!』(1965)に収録。

The Beatles The Night Before(アルバム『Help!』収録2009 Remaster)を聴く

ポールのぶっとびボーカルのダブリングサウンドが力強くてかっこいいです。ドラムのカツ!タン!という硬質なスネアのサウンドのアクセントが非常にいい塩梅で気持ち良い。ブーン・ブブーン…というポールのベースの音色も深くて、グルーヴに躍動感をあたえます。

バックグラウンドボーカルのサウンドも歌詞で呼応するところと、Ahと母音の伸ばしでハーモニーを出すところの緩急があり、その歌声も力強くてグループとしての熱量を感じます。

音量としてはやや控えめですが、リズムとハーモニーを鼓舞するエレクトリックピアノの音色が右寄りの定位でいい仕事をしています。

間奏のエッジーなサウンドの、低い音域と高い音域のオクターブユニゾンのギタープレイが僥倖。

マラカス「シャス!!」という表拍をしゃんしゃんと強烈に押し出すパーカッションの色付けも良い効果です。

華のある目玉トラック!という存在感ではありませんが、グループとしての基本的な体力の良さを感じさせ、アルバムの質感を強めているところに価値を感じますし、単純にむつかしいこと抜きにノーガードで聴いていて気持ちが良い1曲です。

青沼詩郎

参考Wikipedia>ザ・ナイト・ビフォアヘルプ! (ビートルズのアルバム)

参考 歌詞掲載ページ J-Lyric>The Night Before

ザ・ビートルズ ユニバーサルミュージックサイトへのリンク

『The Night Before』を収録したThe Beatlesのアルバム『Help!』(1965)