愛の言葉 The Word The Beatles 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Beatlesのアルバム『Rubber Soul』(1965)に収録。
The Beatles 愛の言葉 The Word(2009 Remaster)を聴く
『Love』というタイトルでもおかしくなかったかもしれないが、あえての『The Word』。愛をうたいます。単語の観念を擬人化して扱った味わいを想像します。
マリファナの使用とこの楽曲のソングライティングの関係を述べたWikipediaページ(記事末にリンク)。ヒッピー文化と「愛」の単語の同時性を『ビートルズを聴こう』(記事末にリンク)のご著者は話します。ヒッピーが隆盛していた当時「愛」という単語が持ったニュアンスは、今2024年に日本の個人がぽつりと『愛』の単語を認識して思うイメージとはだいぶ感じ方がちがうかもしれません。
Dマイナーの音と、Dメージャーの長3度がぶつかったような清濁併せのむ響きを感じます。ギターとピアノで、ひょっとしてそれぞれが短3度と長3度を鳴らしていたりするのかな。ジャ!と左サイドのエレキギターのチョップの如きサウンドが鋭いです。このバキ!ジャミ!としたぎすぎすしたサウンドはいかにもなビートルズサウンドの私が思う典型のひとつです。
ベースが引っ掛けるように和声音を跳躍ですばやく撫でさっていく。早いフレージングが聴きどころです。音の切り方もメリハリがはって良い。
ボーカルの3声の均衡が独特の味わい。どのメロデイを主として聴いたらいいのか惑わせます。主を判定する意味もない。人類平等、みな兄弟じゃないかと。リードボーカルという観念が欠如したヴァースに思えます。かたまりでひとつだし、あるいは聴くやつが好きなところを聴けばいいとばかりに自由を煽ります。
Bメロ、ビートルズ解釈的にはミドルエイトというのかしら、ここのジョンのボーカルが痛烈です。たたみかけるような、急き込むようなリズムの緊密感が後半になるにつれ高まっていきます。
マラカスのトリルの高らかなこと。
エンディング付近のジョージ・マーティンのハーモニウムが、私の耳のスピーカーコーンが飛んでしまいそうなくらい強烈です。扇風機に指を差し入れてガリガリいわせたみたいな謎のガラガラ声みたいなニュアンスも感じます。オルガンを出力するロータリースピーカーにでも、誰かいたずらした?
メージャーなんだかマイナーなんだか。リードの旋律がどこなんだか。前段にも書きましたが、清濁併せ呑むというのか、種の多様のごった煮、世界の様相そのままのような交雑性を思わせます。
愛の観念についても考えさせます。すべてを解決する魔法のひとことだよ。効果がないというのなら、それは君の愛への信用が足らないせいさ。信じてごらんよ……。洗脳……といったらなんだかコワいですが、ビートルズ流の「諭し」を思います。わかるやつには分かるだろ? ジョークの母は「余裕」です。
鋭いギターの刺すようなサウンド。レーザービームみたいにぶっとんでいくハーモニウムのサウンド。ボーカルの集合音にはヒャーっと透き通るような声の質感もあります。爽やかな気もするし濁ってもいる。クセがあって、病みつきになる。旅館の夜の御膳に、ひと鉢くらいはこういう劇物がなけりゃね。
「愛」ばっかりでやっていけるものでもなけりゃ清濁併せ呑むさ。
青沼詩郎
ザ・ビートルズ ユニバーサルミュージックジャパンサイトへのリンク
『The Word』を収録したThe Beatlesのアルバム『Rubber Soul』(1965)
参考書
ビートルズを聴こう – 公式録音全213曲完全ガイド (中公文庫、2015)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『愛の言葉 The Word(The Beatlesの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)