モンキーズを聴いたyoung gneration
モンキーズについて思いだす最初の記憶は、私が高校生か大学生くらいの頃でした。自作曲を多重録音機をつかって録音する活動をするようになっていた私に、母がモンキーズを思い出す、というようなことを言ったのです。モンキーズを好き、特に主たるボーカリストのデイビー・ジョーンズを好きな人には怒られてしまうかもしれないというかおそれおおいことですが、私の母が、「あんたの声がちょっとデイビー・ジョーンズに似ている(それっぽいところがある)」みたようなことを言うのです。モンキーズをちゃんと知らない私は「(ああそうなのか)」と思うのみで、「ああ」とか「うー」とか半端なあいづちを返したような。
そのエピソードから数年経った頃、私がレコードプレイヤーを入手してVinylを聴くようになったので実家に母の所有盤がいくつかあったのを思い出し、それらを拝借してきました。その中にThe Monkeesのものがあった気がします。おまけに母の父(私の祖父)はオーディオ好きだったので、彼の遺品で持て余していたスピーカーも拝借してきました。母の所有レコードと、祖父のスピーカーがいま、私の家にある状態なんですね。はなはだ酔っ払いの自分語りをここまで読ませてしまって恐縮です。ま、モンキーズ聴こうぜ。
私の母はリアルタイムでモンキーズを聴いたyoung gnerationだったのです。
曲についての概要など
作詞・作曲:Tommy Boyce, Bobby Hart。The Monkeesのアルバム『The Monkees(“恋の終列車”)』(1966)に収録。
(Theme From)The Monkeesを聴く
まっすぐなんだけどパワーと気概を感じるデイビーのボーカルが青青として、勢いがあります。若い聴衆の熱狂の花が咲くのもわかる気がします。
よくビートルズかモンキーズかみたいな比べ方をされることもあるようですが、なんだか色々と、そもそもが違うグループだと感じます。私の世代のJPOPだと、グレイかラルクか、ゆずか19(ジューク)かみたいな……(わかる人いますか?この感じ)。
右側にがっつり竿物が寄った定位です。左をドラムスが占めます。シンバル類を、ヴァースの「ツーチッチ、ツーチッチ……」というハネたグルーヴを表現するハイハット以外は、あまり頻用しません。最高にいいところで一発ジャーン!と太いコシのあるシンバルがクラッシュ的に鳴らされるくらいです。ワンコーラスが終わるときにはサスペンデッドシンバル的なアプローチが入って、バッサリと編集点があるような感じでしょうか。コーラス(サビ)はタンバリンです。こういうところでライドシンバルかハイハットのオープンを鳴らしたらいいのにとも思うのですが、ジャルジャルとうるさい金物(シンバル)がないおかげで、グループのハーモニーワークが目立っています。ベースのダウンビート、ギター類も然り、竿物もあいまってぐんぐんとビートを前に運んでいきます。
間奏でピピピピピピピピ……と、3分割の同音連打を猛烈にかますトーンが入ってきます。オルガンでしょうか。
ギターのサウンドメイクが凝っていて、トレモロがかかったように揺れています。ヴィブラートさせないデイビーのまっすぐな発声と対比が効いていて、お互いを引き立てているようです。
クラップだかフィンガーの音がチャっと入って連帯感と楽しげな雰囲気、勢い、ノリを演出します。
歌うのが忙しいんだよ!おれらがモンキーズだ!若いの、一発言ってやろうぜ、なあ?!的なやんちゃぶりが爆発しています。これは楽しい。
“We′re just tryin’ to be friendly,
Come and watch us sing and play,
We′re the young gneration,
And we’ve got something to say.”
(『(Theme From) The Monkees』より、作詞・作曲:Tommy Boyce, Bobby Hart)
五つの赤い風船というフォークグループの『遠い世界に』という曲に
“雲にかくれた 小さな星は これが日本だ 私の国だ 若い力を 体に感じて みんなで歩こう 長い道だが 一つの道を 力のかぎり 明日の世界を さがしに行こう”
(五つの赤い風船『遠い世界に』より、作詞:西岡たかし)
という歌詞があります。1968年のシングル曲です。モンキーズのテーマよりも2年ほど後です。
若い人が多かった。勢いがあった。ヒトにも、国にも、どこかそういう、猛っている熱が、局所のみにおいてかもしれないにせよ、あったのを察します。現代だって、もちろん、いるところには若い人はいるでしょうし、アツいシーンというものは存在するでしょう。それにしても、現代のそれとはまったく違う熱があったのだろうなと、モンキーズをみても、ビートルズ熱をみても、グループ・サウンズをみても、フォークブームをみても思うのです。私が時間旅行で行ってみたい時代の筆頭です。
青沼詩郎
参考歌詞サイト Musixmatch>(Theme From) The Monkees
ザ・タイガースが『ザ・タイガースのテーマ』として歌詞内のとタイトルの名詞を変えてカバー。名詞以外はそのまんまですが、日本に波及したザ・モンキーズの影響や人気を察します。
『(Theme From)The Monkees』を収録したアルバム『The Monkees(“恋の終列車”)』(1966)