Think For Yourself 嘘つき女 The Beatles 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:George Harrison。The Beatlesのアルバム『Rubber Soul』(1965)に収録。

The Beatles Think For Yourself 嘘つき女を聴く

ゲッバゲバのファズのベースギターの存在感がえぐい。なんだかむしゃくしゃした想いを執念深くベタ塗りしていくみたいです。ビットクラッシャーという音の解像度を荒くするプラグインが音楽制作ソフトのなかに入っていたりしますが、そんな感じで音のカーブがブリブリと目の粗いヤスリがけをしたみたいになる。スピーカーコーンが物理的にブスブスいっているみたいな感じです。

右にファズベースがいて左にはちゃんとフツーのベースがいます。そちらがマイルドで丸みのある音。躍動感があって紳士な音。右のファズがヤンチャすぎるので余計に紳士的に感じてしまいます。

左にふられたドラムはタツ!と短いスネアのサウンドが印象的。右にはエレクトリックピアノがいて、エイトビート、1拍2分割の8つ打ちでコード・リズムを刻む演奏はジョンの演奏だそう。ウーリッツァーかな? ローズかな?とエレピの名機を思い浮かべてみるも、なんとこの演奏はそれら名機の登場に先駆けて存在する機種で、ホーナーのピアネット(Hohner Combo Pianet)だといいます。発音機構が独特みたいなんですが誰か図で解説してほしい。左のドラムにハイハットの分割がないぶん、エイトビートをこのエレピが担当するのです。

右側のマラカスが表現豊か。しゅりしゅりしゅり、しゃり……小さな躯体のなかにツブツブが入っているだけの単純な楽器ですがその可能性、音色のニュアンスの広さに目をみはります。タンバリンもチャリっとアクセントする。この曲においては、ドラム、ピアネット(エレピ)、マラカス、タンバリンをひとつのステム(リズムチーム)と私は括りたい。

左にはリズムのギター。ファズベースの存在感が違法レベルなのですが、リズムにしゃんとスジが通るのにこのリズムギターの功労は大きいでしょう。

ボーカルトラックは左に比重があるように感じます。右に音域や層をひろげるように補佐的なボーカルトラックがいる感じ。両方から声が立って私の両耳のあいだに通電するのです。

コードの響きが幻惑的で、何が真実かよくわからない。基本Gマイナーだと思いますが、Gのドミナントセブンスの響きも頻用していてそのまま根音が長二度あがる進行などとります。どこに腰をおちつける場所があるのか。そんなものないよと人生の厳しさをテメエで考えろと突き放します。ジョージ・ハリスンの作曲作詞で、天才ふたりのソングライティングが目立つビートルズですがこうしたジョージの投げる石の波紋の大きさこそがビートルズを荒々しく幅のあるチームにしている一因であるのにあらためて深く驚嘆します。

青沼詩郎

参考Wikipedia>嘘つき女

参考歌詞サイト JOYSOUND>Think For Yourself

『Think For Yourself』を収録したThe Beatlesのアルバム『Rubber Soul』(1965)

参考書

ビートルズを聴こう – 公式録音全213曲完全ガイド (中公文庫、2015年) 

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Think For Yourself 嘘つき女(The Beatlesの曲)ギター弾き語り』)