津軽海峡・冬景色 石川さゆり 曲の名義、発表の概要
作詞:阿久悠、作曲・編曲:三木たかし。石川さゆりのアルバム『365日恋模様』(1976)収録、シングル曲となる(1977)。
石川さゆり 津軽海峡・冬景色(『石川さゆり2017年全曲集』収録)を聴く
津軽海峡ってどこやってレベルの浅知恵ものの私です。本州最北で北海道とのあいだを隔てる海峡……ええ、なんとなくそんな気はしている・それくらいは知っている気がしますが、あらためて津軽海峡について基本的な概要を己の知識で説明せよと言われれば検索に頼る軟弱者が私です(参考Wikipedia>津軽海峡)。
この楽曲『津軽海峡・冬景色』の出自となるオリジナルアルバムのコンセプトがすごく良いんです。CDジャーナル>石川さゆり / 365日・恋もよう [廃盤]にあるミニ・レビュー欄を見てください。“阿久悠・三木たかしのコンビによる12曲を1月~12月の歌で構成した石川さゆり版“カレンダー・ガール”もの”とあるのです。ニール・セダカや大滝詠一さんが好きな音楽ファンは、もうこのコンセプトを聞いただけでも聴きたくなるのでは?
あいにく石川さゆりさんのこのオリジナルアルバムが現在(この記事の執筆時:2024年末)入手困難。配信などもないようにみえます。
CDジャーナルサイトからの引用を続けますと“アイドル演歌といった歌声が続いていって、突然11月と12月になると歌声が変わり堂々の演歌シンガーぶりを発揮していく石川さゆりがいる”(CDジャーナル>石川さゆり / 365日・恋もよう [廃盤]より引用)とあります。振れ幅と思い切りの良さでコンセプトを乗り切るアルバムの様相を想像させる率直で正直なミニレビュー。ああ、余計にこのオリジナルアルバムを聴きたくさせます。
『津軽海峡・冬景色』は作詞が阿久悠さん、作編曲が三木たかしさんなのですね。阿久さんはその存在の大きさ・広さや作品の物量のせいか、特定の楽曲がたったひとつピン!と思い付かない私です。作曲の三木たかしさんで真っ先に私が思い浮かぶのは『アンパンマンのマーチ』。それから九ちゃんが歌い、のちの世代では合唱曲としても親しまれる『心の瞳』も三木たかしさんです。
『津軽海峡・冬景色』の聴き味。石川さゆりさんの歌唱の、1本の糸がピンとつながった集中力が聴きどころです。可憐に声のオシヒキをコントロールし、音程にねじれやひねりを加えゆらめかせ、聴き手のまなざしを惹きつけます。それでいて、声のキャラクターそのものはジャンルとしての演歌にこびりつくでもなく、はつらつとしてポジションが高く、凛とした爽やかな聴き心地があります。
ストリングス。歌詞のないところでリードをとる、オーボエやサックス。つねにクワイヤ(バックグラウンドボーカル)の声をまとって、壮大な海峡の険しさを演出・強調します。脇役に徹するドラムとクラベスやクラップといったパーカッション系・リズム系の音色が入れ替わりたちかわりリズムの情報量にも波をつくります。チェンバロかクラヴィコードか、古楽器系の鍵盤楽器の音色も感じます。シンセなどの内部系の音、弦などのスタジオミュージシャンの演奏、石川さんの歌唱が融合します。アコースティックギターのチャリっとした感じのきらびやかなストラミングもエッジをいろどります。
テレビから流れてくるばかりがこの曲との接点でしたので、きょう初めて両耳をヘッドフォンで覆って静かな環境で聴き堪能しました。楽曲のナカの景色なのかソトづけの価値なのかあるいはその両方なのか、師走のきびしさが私を襲う壮麗な響きをもつ名演です。
青沼詩郎
『津軽海峡・冬景色』を収録した『石川さゆり50周年大全集 ~50周年 50曲~』(2022)。『津軽海峡・冬景色』を収録したオリジナルアルバム、石川さゆりの『365日恋もよう』(1976)は現在(この記事の執筆時:2024年末)入手困難のもよう。
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『津軽海峡・冬景色(石川さゆりの曲)ギター弾き語り』)