月を超えろ 奥田民生 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:奥田民生。奥田民生のシングル(1999)。
奥田民生 月を超えろを聴く
チョークを横に寝かせて全体重をかけて描いた線みたいな奥田さんの太くてまっすぐなノンビブラート。『月を超えろ』に限った特徴ではありませんが楽曲の雰囲気も相まって特に奥田さんらしさの感じられるシングル曲。
シングル『月を超えろ』のAmazonの商品サイトに“自宅レコーディングによる3曲”とあります。奥田さんによるひとり多重録音作品だと私は勝手に読み替えて解釈します。
曲中のほとんどの場所でフロアタムをハイハットのかわりにエイトビートで打っているのかな? 太くてまっすぐなビート感、実直なテンポを補強するドラムサウンド、パターン自体やフィルイン、キメなどは実にシンプルで必要十分なプレイです。ベースもまっすぐなエイトビートの平らなストロークが楽曲の安定感をなします。
左と右それぞれにエレキギターがいて、コードとリズムを出す役割。それぞれにちょっと違う動きをしています。はっきりと音域をすみわけているという感じでもなく割と近い帯域にいる感じもしますが、一方がアルペジオっぽい動きをしたり、一方が一定のコードのポジションから指を動かしたり離したりしてまっすぐなビートを彩ります。ドラムがハイハットなどをほとんどガシャガシャとさわらないアレンジになっているおかけか、エレキギターの倍音が明朗に響くスペースがあり華やかな印象です。
イントロなしのボーカルからのオープニング、リバーブが漂い、月に向かって声が響いている空間を感じます。ぽつねんとした孤高の仙人感よ。
“君を乗せてゴーゴー”サビの最初のフレーズ付近で2/4拍子というのか6/4拍子というのか、印象的でシンプルな語彙とリフレインに変拍子によってフックを与えているのが巧いです。
間奏に入ると3本目のギターのオーバーダブがフレームインしソロ。高らかに獰猛に歌いあげます。竿物とドラムのサウンドの印象が強勢ですがオルガンのサウンドがちらちらと彩りを添えているところ、月のまわりに星屑のたわむれ感。このオルガンも奥田さんが弾いたのでしょうか(未確認)。
車やドライブを思わせる奥田さんレパートリーのコンピアルバム『CAR SONGS OF THE YEARS』にも選ばれていますが、車の扱いは曲中では比較的小道具的な扱いな気もします。「君を乗せてゴーゴー」と確かにサビで言っていますが、君を乗せるハコが必ずしも車でなくても良いような、ひろくて(広い・寛い)大きなスケールを感じる心よさがあります。夜風が君を乗せるのかもしれないね。
青沼詩郎
奥田民生のシングル『月を超えろ』(1999)
『月を超えろ』を収録した奥田民生の『CAR SONGS OF THE YEARS』(2001)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『月を超えろ(奥田民生の曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)