まえがき

臭みたっぷりのEmの響きと音階、母音を伸ばして小節線をまたぐ傾向のある節回し、言葉の当て方、メロディ、フェイクに特徴のあるソングライティング面。激烈なエッジのあるバンドのサウンド。粘着質と乾いた鋭さの極端さを合わせもつメインボーカルの歌唱、質感。もろもろの独創性がチャレンジングで好戦的。

四季を背景に己の不遇を嘆くかのような耽美な世界観があります。日本刀のようなバッサリ感、墨が飛び散るようなモノクロ感もあり硬派で漢っぽさすら覚えます。その殻の内には恋や情愛に振り回される自己の弱さも内包しているようでたまりません。

浮舟 GO!GO!7188 曲の名義、発表の概要

作詞:浜田亜紀子、作曲:中島優美。GO!GO!7188のシングル、アルバム『鬣』(読み:たてがみ、2003年)。

GO!GO!7188 浮舟(アルバム『鬣』収録)を聴く

案外左右の定位の使い方が狭めです。右に少しメインのギターの定位がずれている。それ以外はひょっとしてモノラルかよと思うくらいに、あえてなのかナロウな音場。個人の数十センチにおさまるくらいの胸の内の吐露を表現しているかのようです。

この音響感が変化するのが、サビを経て「来来来(ライライライ)……」と歌うところ。アディショナルギターが現れて、左と右のバランス感が補強され視界もワイドになります。

間奏が圧巻で、コーラスのかかったこよこよとくねり、雨を降らせるようなギターのオープンな響きでメインボーカルのメロディの再現、そしてベースもボーカルメロディの再現。パートを渡りあるくモチーフよ。そしてギターソロその2というのか間奏はつづきますし、間奏のみに現れる和声進行を経てBメロに回帰。

ベースの暴力的な歪みトーンが曲中の基本です。低いところにまとまっているからこそベースの音色はベースらしさを私は覚えるのですが、そのベースの音を歪ませると要するに倍音が高い周波数に向かって広がることと思います。その感覚は、かえってベース特有の低い周波数にまとまったキャラクターを捨てることになる諸刃の剣だと私は感じます。果敢にそんな暴力的なトーンを選んで、振り返りがちな主人公の胸中にある自己憐憫に張り手とビンタを交互に1ラウンド3分浴びせ続けるようなスパルタなベースに失禁しそう。

バカスカとドラムも容赦なくおのれの肉体をしばき倒す豪雨のごとく、オープンシンバルをばしゃばばしゃとあびせたり、タムをどこどこと連打したりと理性を失った暴れ馬の如し。

そんなバンドの轟音にこそ、墨で引いた一本の線のようなボーカルの質感、歌詞、メロディの描く殺伐としつつもわびさびのある世界観が映えます。

青沼詩郎

参考Wikipedia>鬣 (アルバム)

参考歌詞サイト 歌ネット>浮舟

GO!GO!7188 ソニーミュージックサイトへのリンク

『浮舟』を収録したGO!GO!7188のアルバム『鬣』(2003)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『【寸評つき】あわれみのバッサリ『浮舟(GO!GO!7188の曲)』ギター弾き語り』)