まえがき
単語をひと文字ずつばらばらに唱え上げることで主題の扱いの比重を爆上げする手法を世界中に知らしめた金字塔ではないでしょうか。主題のメロディの半音下行も愛嬌が高く印象的で人懐っこく記憶に残ります。エイトビートのまっしぐらなピアノのストローク、ロックンロールのようなフレージングのベースラインなどはロックンロールっぽい。バックグラウンドボーカルのレイヤーはドゥ・ワップっぽい。倍音をまきちらすサックスのサウンドはどこか私にバブルガム・ポップのような「流れもの(娯楽として刹那な消費材)」であることに自覚的な精神を思わせます。
Vacation バケーション Connie Francis 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Connie Francis、Hank Hunter、Gary Weston。Connie Francisのシングル(1962)。
Connie Francis Vacation(『Connie Francis』収録)を聴く
はつらつとしたリードボーカルが非常に凛として清涼な印象ですし、茶目っ気や愛嬌もいっぱいに感じます。名歌唱ですね。
左側にバックグラウンドボーカルが定位。主題の、一文字ずつばらばらに唱え上げるフレーズを厚くしたり、あー、ウワァーとのばす様子は私にドゥ・ワップを思わせます(ドゥ・ワップの要素ってそんな単純じゃないかもしれません)。エンディング近くになると「Hey!」なんてガヤを投げかける男声キャラなんかもいてそれにコニーの方が一瞬遅れて呼応するみたいな局面もみられます。ガヤが自由になって、バケーション(休暇)の雰囲気が爆上げ模様になりつつフェイド・アウト。
ブンブンと深いベースの音色、そのラインはロックンロールぽいなと思いましたが、案外、左側定位のエレキギターも単音でロックンロールベースの常套句みたいなフレーズを弾いていてそれが私にロックンロールっぽいベースラインを印象付けているのかもしれません。スチャっとカッティグでキレのよさを演出するエレキギタートラックは別で入っています。
左のほうの定位でば!ば!と太くあたたかな音色のサックスが半音進行などもおりまぜた憎いフレージングを含めてカウンターやオカズを添えます。ソロではそう、「ば!ば!ば!」みたいな、音程をもはや重視しない、エレキギターでいったらブラッシングみたいなリズム重視の奏法を織り交ぜてつやつやでぎらつく真夏の太陽のようなリードプレイで魅せます。夏が来ている感よ。
このハイライト感が、いつかは終わりがきてしまう「休暇」という刹那な主題を暗に射抜いているようでセンチな気分、哀愁も同時に感じてしまいます。終わりがあるから儚くて美しいのです。
青沼詩郎
参考Wikipedia>Vacation (Connie Francis song)、コニー・フランシス
『Vacation』を収録した『コニー・フランシス・ゴールド』(2005)