まえがき

高校生時代の私が所属した、フォークソング部。部の友達に弾き語りや芸術や文学の達人がいたんです。その人が教えてくれた世にもステキなバンドがTravisでした。いくつかのアルバムを聴いて、私はいくつかのアルバムをCDで買ったりもしました。心の棚にTravisの領域が出来るくらいに惚れこんだものです。

それからしばらくして、テレビで流れるクルマのCMでTravisの楽曲が用いられているのに気づきます。爽やかな曲想が家庭のお茶の間に流れてじつに調和します。彼らの音楽は普遍なんだなとあらためて感嘆したものです。

Walking in the Sun Travis 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:Fran Healy。Travisのシングル(2004)。Travisのコンピレーションアルバム『Singles』(2004)に収録。

Travis Walking in the Sunを聴く

ちゃきちゃきとしたアコースティックギターの響きが輝かしい。ギターのフレットの低い位置のほとんどを無駄にするというくらい高い位置にカポタストをはめると、このキラキラした音色がいくらか真似できます。高〜いところでDのローコードポジションを基盤に演奏するとこのAメージャー調の響きが真似できるのではないでしょうか。

ハイフレットのカポタストであるという以上に、そもそも12弦ギターの音色が入っているのかなとも思います。あちらこちらが、ギターのふわふわした倍音で満たされている。まるで噴水が陽光を乱反射する日曜日の公園のベンチに座って鳥や子供や家族などの往来を眺めている気分です。

テシっと点を止めるようなスネアのサウンド。ゲートが効いているのか、幅とキレ(タイトさ)の両方を感じるサウンドがバンドのアンサンブルを引き締めます。このスネアのサウンドをほどよく広げるみたいにベースがせり上がるように動きのあるパターンでベーシックを演奏します。

冒頭から書くべきだったのがリードボーカルでしょう。この可憐な歌唱のアプローチといったら稀有です。絹のおりものが頭のうえからやさしくかむさるみたいなソフトなヴァースの歌い出しと来たら尊い。コーラスは跳躍音程が連続しますが極めて滑らか。どこかで声区をまたいでいるのかわかりませんがそんなこと忘れさせるくらいに滑らかで透明感があるボーカルが光に溢れています。

バンドのベーシックにすらっと線を引きカウンターラインを演じるストリングスのオブリガード。それからピチカートの音色もアクセントになっています。

ツーコーラス消化したあとの展開が面白い。ストリングスの高い音色がEメージャーの和音からEマイナーの和音へ移ろう軌道、のちC#→F#m→Gとつながってそれまでの調性の地平線を一時忘れ浮遊させボーカルが復帰。それまでにないブリッジで壮麗なボーカルの軌道。そのままB→A→Eのパターンでギターのブーストした質感がエンパワーメントしエンディング、Eの和音をポーンと置いてそのまま終止してしまいます。余韻にギターの音色の荒々しさ、そしてオルガンなどが背景にいたのかと思わせる。陽光のなかを歩いて遠ざかって行ってしまう情景でしょうか。

シンプルなパターンを繰り返す丁寧さや平易さは大衆にやさしく、そこからぐねっと大胆にひねりを加えてそのまま次の章へどうぞと。補完される未来への期待感です。ドライブのお供にもぴったりだね。

青沼詩郎

参考Wikipedia>トラヴィス (バンド)

参考歌詞サイト JOYSOUND>Walking in the Sun

Travis 公式サイトへのリンク

『Walking in the Sun』を収録したTravisのコンピレーションアルバム『Singles』(2004)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『Walking in the Sun(Travisの曲)ギター弾き語り』)