沼りそうな神秘感
かろやかに弾んだグルーヴなのですがとても鎮痛なフィールです。Am調の響き。君のお母さんなら知っているであろう、ずっと前のヒットソングで踊ろう……と呼びかける歌詞。そうした、ひと昔まえのヒット・ソングの意匠をオマージュしてのことなのでしょうけれど、それがビートルズのフィルターを通って、摩訶不思議で幻惑的な雰囲気をまとっています。
映画『マジカル・ミステリー・ツアー』で、貴公子のような装いのメンバー4人が音楽に合わせてゆっくりとなまめかしく階段を降りてくるシーンでこの楽曲が印象的に使われています。
摩訶不思議、神秘、幻想が輪廻するような曲のキャラクターは、同じパーツに執拗に回帰する構成によるところかもしれません。耳にたこができる訓戒や箴言、呪文やお経のような独特の魔性すら感じます。この曲で踊ったら一方通行の沼にはまってしまいそうです。
Your Mother Should Know The Beatles 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:Lennon-McCartney。The Beatlesのアルバム『Magical Mystery Tour』(1967)に収録。アルバムと同名映画のサントラ盤。
The Beatles Your Mother Should Know(アルバム『Magical Mystery Tour』収録、2009 Remaster)を聴く
トリプレットのノリにアソビがあるのが良いですね。メモリ付きの定規にあわせたみたいなシャッフルじゃない。自然にはずんでいます。表拍のダウンビートです。ピアノのストロークにベース、ドラムが自然にフィットしています。
ベースのイントロ付近のグリッサンドの音色が特徴的で、「トゥゥンッ!」と、なんだかリズムマシンの名器で入れたタムみたいな音色の装飾が印象的です。
冒頭のボーカルレイヤーの揺らぎが幻惑的。コーラスなどのエフェクトがかかっているのかどうか。しゅわしゅわと揺らいで、私の脳が溶けてしまいそう。
オルガンの音色がミョーンと鋭くギラつきます。アナログ感につつまれた優しい質感の諸パートにテクスチャのメリハリを与えます。ピアノのサスティンの強さ、じんじんとアナログコンプレッションしたようなサウンドはまさに私の理想のピアノの録り音です。ダウンストロークでリズムを刻むところはもちろん、伸びやかさやサスティンのコシの強さを感じるところもあるピアノプレイとサウンドが楽曲を牽引します。
2009 Remasterを聴いてこれを書いていますが、ボーカルの定位が寄っていて……後半で「Sing it again」と呼びかけ、Da da da……とのスキャットに入るところでボーカルの定位がまた極端なところから出てきます。舞台を見ている気分になる音源です。あちらこちらにキャストがいて、独自の動きをしているみたい。
ボーカルのチカラが終始抜けていて、そんなところも、まるで甘い囁きを流し込まれ洗脳を受けているような気分になるのです。すべてのことに「はい」「そうです」「従います」と言ってしまいそうだ。
青沼詩郎
参考Wikipedia>マジカル・ミステリー・ツアー、マジカル・ミステリー・ツアー (映画)、ユア・マザー・シュッド・ノウ
参考歌詞サイト Genius>Your Mother Should Know
The Beatles ユニバーサルミュージックジャパンサイトへのリンク
『アンソロジー・コレクション』のリリースを記念して、「Free As A Bird」のカバー動画投稿キャンペーンがスタート! ユニバジャパンの公式さんがなんとカバー動画選手権(TikTok)を開催。投稿の締め切りは2025年12月31日いっぱい。
『Your Mother Should Know』を収録したThe Beatlesのアルバム『Magical Mystery Tour』(1967)
マジカル・ミステリー・ツアー (DVD)