夢がかなう10月 友部正人 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:友部正人。友部正人のアルバム『夢がかなう10月』(1996)に収録。
夢がかなう10月 友部正人
路上、路頭の風景が見える曲だなとは思っていました。素敵な曲です。
夢がかなうタイミングはいつでもありうると思うのですが、10月と冠した曲題。
唐突に出てくる、“新しいパンのかおり”。
想像させるのですが、なんでこのモチーフを選んだ・この情景が出てきたのだろうとこの曲の出自について興味を持っているのを自覚する私。
この曲を収録したアルバムについて検索していて、HMV & BOOKSのサイトにいきあたりました(本文末にリンク)。
ニューヨークで録音を敢行したそうです。
きっと曲作りも、現地でおこなったものがあるのではないでしょうか。そして、ずばりこの『夢がかなう10月』が、その1曲なのではないかと想像するのです。
“新しいパンのかおり”。そう、日本でもパンはあまりに多くの人に愛され、どの街にもかならずや2つや3つのパン屋さんがありますから何もこのフレーズだけでニューヨークらしいと決めつけるのはいかがなものですが、このアルバムがニューヨーク録音だと知ったところで、なるほど、ニューヨークだからか!! と猛烈に合点している私がいます。
ニューヨークで録音する夢がかなったのも、10月だったということなのではないでしょうか。このアルバムのリリースが1996年9月とされているようなので、ひょっとしたらニューヨークでの録音は発表の前年にあたる1995年なのかなと想像します。
ボトルネックっぽいリードプレイのギター。蛇腹系……アコーディオンか何かのふいご楽器。チキチキと華やかなタンバリン。拍のオモテを強調していく純朴なベース、スパンとさばけた音色のドラムス。
フィドルがいてもおかしくなさそうな編成ですがポルタメントするトーンはギターのスライドプレイでしょう。
これらの演奏担当も、現地で合流したミュージシャンらによる演奏かもなと想像します。路上の輪のようなアンサンブルです。
ニューヨークの路上にも銀杏って落ちるのかな。
ぼくらの一人前になるやり方じゃ いつまでも半人前にしかなれやしない 半人前になることこそぼくの夢だった それこそぼくの一人前になるやり方さ
『夢がかなう10月』より、作詞:友部正人
ああいえばこういう論理だと難癖つけることもできそうですが、猛烈に私はそれわかるわぁ!と共感する、エンディング付近のみにあらわれるハイライトのラインです。
世間一般が認める一人前像が仮にあるとしましょう。でもそれがなんなんだ。そんな出来上がったステレオタイプなイメージになんの価値があるんだ。たった1人の自分がその数多ある一人前像のひとつに、ほかとたいして区別もつかないようなテクスチャでならぶことのどこが面白い??
これこそ、半人前の青沼詩郎(筆者:私です)のヘリクツなのかもしれません。屁理屈だという人はそう蔑めばいい。私は私だけのやり方で、私だけの一人前像になるのです。
1950年生まれの友部正人さんですから、1996年の発表当時は46歳くらいだった計算。
ボーカルの胸に響く深みが10月の冴えた空気のように鋭くて枯れたブルースの味わいです。カッコイイな。
青沼詩郎
『夢がかなう10月』を収録した友部正人のアルバム『夢がかなう10月』(1996)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『夢がかなう10月(友部正人の曲)ウクレレ弾き語りとハーモニカ』)