ウンチョコDJはスクラッチプレイをするらしい。だから、音楽を選んで継ぎ目なくプレイして盛り上げて行くタイプのDJより、もっと動的なパフォーマンスを含めるスタイルのDJなのかもしれない。
ウンチョコDJはGO!皆川(お笑い芸人)のネタに登場する。
GO!皆川を見て涙を流して笑う妻を見て私は「(笑いの)ツボ浅い!」といいながら涙を流して自分も笑っている。じぶんのことを棚に上げているが、ひとのこと言えないのだ。
実際ウンチョコDJがいたとして、そういうプレイをする人かどうか知らないけれど、私は頻繁にひとりDJをしている。ある音楽をかけて、思いついた次の音楽をすかさずかけていくという遊びをよくやっているというだけの話。お行儀の観点で問題あるかもしれないが、家族との食事中なんかにもよくやってしまう。子どもに「これ○○さん?」と訊かれるので、アーティスト名や歌い手の名前を教えてあげる。「××さんだよ」。すると子どもはその名前を覚えて、次に何か音楽をかけたときに「これ××さん?」と訊いてくる。うちの子どもは「クルリさん」や「サクライさん」や「イイダさん」をすでに覚えていて、何か音楽をかけるとたいていその3つあたりから選んで訊いてくる。ちなみにゴウカな有名アーティストに混じって私は自分のつくった音楽をかけることもあるせいで、そうした名前に「シローさん」も連ねている、うちの息子のミュージシャン・ディクショナリー(インデックス)。タレント名鑑といったところか。光栄である。
DJプレイごっこといってもクロスフェードできる機材を使用するわけではない(DJ機材を持っていない)ので、ただ、次々に聴きたいと思ったものをかけていくだけである。
今朝は、起きたら頭の中にMr.Childrenの『Prism』があった。The Beatlesの『Yesterday』が作曲された有名なエピソードみたいな言い方だけど、普通に既存の他人の曲だから『Yesterday』のケースとは大違いである。
今朝は寝坊した。それから、いつも私は現実と理想のはざまでうんうん悩んでもいる。たまたま昨日そのことを意識する機会があったから影響したのかもしれない。
Mr.Childrenの『Prism』は、物憂げで、憂鬱で、感傷的な美しい曲。
歌詞 http://j-lyric.net/artist/a001c7a/l000dbe.html
心の内に理想を持っていて、仮面をつけて、現実と対峙している。私自身とこの曲の姿が重なって思えた。
この曲はthe pillowsのおかげで出来たという。みなまでは知らないが、この曲が今のかたちとして存在することになったのはthe pillowsによる影響が要なのだと理解している。the pillowsとMr.Childrenは音楽で尊敬し合っている様子で、対バンしたりカバーし合ったりしている。the pillowsトリビュート『シンクロナイズド・ロッカーズ』ではMr.Childrenによる『ストレンジ カメレオン』が聴ける。
Mr.Childrenの中でも比較的新しいものが聴きたくなって、アルバム『重力と呼吸』(2018)をウンチョコDJ(思いつきで音楽を次々にかけること)していたら、2曲目『海にて、心は裸になりたがる』のサウンドでなんとなく思いだしたのが10-FEET『RIVER』だった。
10-FEETは京都で結成したバンド。私が敬愛するくるりが京都出身というつながりでも私は意識することがある。『RIVER』のサビの歌い出しのフレーズ“母は泣いた…”。 “あのRIVER……”やCメロのところのキャラクターの違うボーカルの演じ分けが強い印象を私に与えていた(私は長いこと複数のボーカリストが歌い分けているものと思い込んでいた)。それを、ミスチルを引き金にふと思い出したのだ。
『RIVER』はシングル(4曲入り)として2002年にリリース。
これをDJしていたら(ウンチョコどこいった)、収録曲『FUTURE』にやられてしまった。
『RIVER』は記憶の風景と心象がクロスし、懐古の趣を引き金に感情が噴出する感じが好き。
こちら『FUTURE』は、「いま」の自分の嘆きに未来の自分がIt’ All Right.と肩を組んで言ってやっている感じが良い。
これがたまたま、ちょうど昨日今日とモヤついた気分でいた私と重なって共鳴した。ウンチョコDJ、家族のいるリビングで泣いちゃうかと思ったよ。10-FEETのまっすぐな態度があらわれた音楽は、私の心を真正面から揺すぶってくる。改めて好きになった。
青沼詩郎
『RIVER』を収録した10-FEETのアルバム『REALIFE』(2004)
10-FEETのシングル『RIVER』(2002)