チェッカーズを聴くようになる
チェッカーズは私が生まれた年代(1986)にちょうど最たる活躍の時期が重なっているバンドのひとつだと思います。新生児は自分の意思で円盤をプレーヤーにかけてリスニングに耽ったりできませんし、私がちょっと成長した10代くらいの青少年になって聴く年代とも少しずれることになります。おまけに私の親世代が10代くらいの頃に親しんだ音楽の年代、ともずれるのです。私にとって1980年代はちょっと溝ってたりします(溝る……という無理矢理動詞)。
近年の私はこの音楽鑑賞(+@)ブログをはじめてから年代雑食リスナーになってしまいました。気が向けばなんでも聴きます。
私が10代くらいの頃には、チェッカーズよりも藤井フミヤさんソロの活動が目立っていました。チェッカーズよりも先にまずはソロ活動ありき、という認知の順番なのです。
『ギザギザハートの子守唄』はタイトルのインパクトも相まってか認知度が高く、ちょっと世代がずれている(?)私もその楽曲名はしばしば耳にする曲でしたし、テレビか何かで断片的に聴いたこともあったと思います。
10代くらいの頃にチェッカーズに親しんだ人って、私のひとまわり上のアニキ・アネゴ世代なのです。そういう世代の人とお関わりになる機会を得ると、ふと1980年代くらいのいい音楽や曲を教えてもらえることがあります。持つべきものはあらゆる世代の人との関わりです。
『I Love you,SAYONARA』はここ1年以内くらいに地元で知り合った同世代の音楽ラバーに教えてもらった曲で、アルバム『GO』に収録されたシングル曲です。世代がアニキ・アネキほど離れていなくても、チェッカーズに親しんでいる人が世間のそこここにいるのは当然で、そういう人と音楽の話をする機会を持てるのは幸せなことです。
楽曲『NANA』は『I Love you,SAYONARA』のひとつ前のシングル曲で、アルバム『GO』に収録されています。なるほど、何かこう、同じ時期に気になってくるものって、過去をさかのぼって同じ時期に生み出された・世の認知を得た一連の作品群であったりするものです。そういうものを、ばらばらと時代の隔たり関係なしに気づくようになるというのは、ネットがあらゆる意味で世界を覆う網の様相をなしている現代の特徴かもしれません。
NANA チェッカーズ 曲の名義、発表の概要
作詞:藤井郁弥、作曲:藤井尚之。チェッカーズのシングル(1986)、アルバム『GO』(1987)に収録。
チェッカーズ NANA(アルバム『GO』収録)を聴く
このベースのリフというか和声やリズムの運び、まるでショッキング・ブルー『VINUS』。私のフェイバリット・ソングです。
ヴィーナス、女神……が主題であり、『NANA』のオマージュ元としてうってつけでしょう。
『NANA』もほんとに勢いと気概に満ちた曲です。やってやろうぜ感がすごい。エレキギターのサウンドやサックスのサウンドひとつひとつをとっても鋭くて激しく荒々しくて、攻める姿勢に満ちています。ドカドカドカドカドカ……というスネアのオルタネートストロークよ。
この荒々しいバンドにのってフミヤさんの歌唱のエッジーな面が闊歩します。「クライャイャイャイヤー」「プリーィーィーィーィーズ!」この節のついたロングトーンがサビでドンと。
チェッカーズのエンターテイメント音楽への視線や愛情を感じるのは複雑すぎないところです。言葉が悪いですが、印象付ける、馬鹿になって大手をふって誰でも一緒に楽しめるような……街のパン屋さんみたいな参加する人を選ばない楽しさ、娯楽性、門戸を開いたアティテュードが楽曲の核にあると思うのです。
薬指のあと……この主人公とNANAは不倫関係とかなのでしょうか。ちょっと妖しい。そこはかとなく……どころか、どエロくもあります。“You don’t cry 未来に感じ 濡れてくれ”(作詞:藤井郁弥)。濡れるは性感の高まりを想起させます。もちろん雨のよく降る国、日本において、濡れるは一般的でふつうのできごと・状態であるともいえます。きわどい表現、といえるでしょう。明らかにエロいと思う私がエロいのでしょう。でも、チェッカーズとして攻めた作品だと思います。そう、誰でも楽しめる門戸の広さを備えつつも、やっぱり彼らは攻めていて、トガったバンドなのです。なのに、愛嬌や愛想がただようからずるいですね。好きになりますよそりゃ。
青沼詩郎
チェッカーズ ポニーキャニオンXアカウント 中野サンプラザでおこなわれた1987年ツアーの様子が2024年3月1日、映画で公開されました。
『NANA』を収録したチェッカーズのアルバム『GO』(1987)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『NANA(チェッカーズの曲)ギター弾き語り』)