図:大滝詠一『お花見メレンゲ』イントロモチーフの採譜例。日本の古い歌曲でお箏の定番曲『さくら』を想起させます。匂いのあるマイナースケールでオープニングを告げ、すぐにルーレットが回るような絢爛なピアノモチーフにつながり、ブラジル音楽のような陽気な様相に。中間部はスウィングしたジャズのようでもあり、エンターテイメントや民謡にまたがって音楽の文脈が節操なく(笑)ルーレットのように雑食に転がっていくところ、大瀧詠一作品の幅広さと遊び心、ダジャレやとんちの跳躍力を強く感じます。

四月の初週のあいさつ

私の地元の今日の天気の話を聞いてください。毎日しとしと雨が降って寒いです。春だというのに……。

四月の初週はお花見シーズンだ! と浮かれるでしょうか。新年度で身の周りの環境が変わってわさわさするでしょうか。仮に就職とか入学とかで環境や身の置かれる状況が変わったとしても、まだ初週ですと小手調べという程度で、新しい状況の本懐を味わっていない時期かもしれません。あるいは上京したとかでしたらそれこそもう本当に身の周りの何もかもが天変地異のようにお祭り騒ぎ(語彙が崩壊)の様相かもしれませんね。

4月の初週などは季節の変わり目で、天気が安定しないのが私の住む関東の定常かもしれません。花冷えなんて言葉もあって、せっかく綺麗にソメイヨシノが咲いていても雨風がすぐに散らしてしまうなんてこともよくあることです。今年度38歳になる私ですが、人生で経験できる春はあと50回あるのかなないのかなと思っています。

お花見メレンゲ 大滝詠一 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:大瀧詠一。大滝詠一のアルバム『NIAGARA CALENDAR』(1977)に収録。

大滝詠一 お花見メレンゲ(『NIAGARA CALENDAR ’81』収録)を聴く

12か月の時候をぜんぶ曲にしてしまってアルバムにしてしまう(カレンダーをコンセプトに……)。元となるアイディア(先行事例)はあったそうですがそれを自分でやってみるところ、大滝さんらしいです。

お花見メレンゲはそのタイトルの通り4月頃を思わせます。お花見のすえにできるゴミの山を描いているところ、ただ甘ったるい(良い意味で甘美)だけで終わらないところが良いですね。

熾烈な木琴がカラカラと小動物か飛び交う虫みたいに音程を追い切ることができないような速さでころげまわります。非常に軽い音で、マレットを逆さにしてグリップエンド側で木琴をなでるみたいに適当に演奏したのじゃないかと思わせますがちゃんと演奏しているのかわかりません。コミカルです。

木管楽器もコミカルな趣きをよく出しています。ルームアンビエンスの個性が非常に強く、どんな部屋でどれくらいのマイクの距離で収録したものかと想像させます。

ピアノがダンサブルで雄弁です。ドラムスもブラジルようなスタイルかなと思いますが意外とパターンの音数はシンプルで、キックがどしんと鳴ってあとはハイハットがチキチキと補完しあうように鳴ります。ひだりの方から打楽器小物、カバサだかギロみたいなのがジキジキと鳴る。このリズムが重要です。

コーラスのボーカルは複数のトラックでワンフレーズずつ分けるように歌唱しているように聴こえます。リズムを埋め尽くしたようなコーラス(サビ)のボーカルフレーズなので、一本のトラックで歌いきってしまうとリスナーの耳も息をすう暇がないせせこましい気分になってしまうかもしれませんのでこういう録り方が功を奏しているのかもしれません。

最後にトチるんです。このトチり方が絶妙です。音楽的に明らかに気持ちが悪い!というドブに落ちない程度に、ちょっとだけトチっている。絶妙ですね。新年度ならこういう愛嬌とウィットのある先輩に仕事を教えてもらいたいものです。花見で仲でも深めてね。

青沼詩郎

参考Wikipedia>NIAGARA CALENDAR

参考歌詞サイト 歌ネット>お花見メレンゲ

『お花見メレンゲ』を収録した『ナイアガラ・カレンダー 30th Anniversary Edition』(オリジナルの発表年:1977、30thの再発年:2008)。’78オリジナルマスターと、逆になっていた定位を直したという’81バージョンの両方を収録。