花でも愛でて呑気に散歩にふけりたい季節でもありますが新しい年度がはじまり環境や人間関係の変化などに見舞われ気分はあがったりさがったりしがちなのも4月や5月頃のこの国の人々の心のなかの時候なのかもしれません。
散歩をモチーフにしたポップソングは案外多いです。
散歩道 ふきのとう 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:細坪基佳。ふきのとうのシングル『初夏』、アルバム『ふたり乗りの電車』(1975)に収録。
ふきのとう 散歩道を聴く
音と演奏がすごく素晴らしいです。きれの短い天真爛漫に跳ね回る妖精のようなベースプレイに心奪われます。
エレクトリックピアノの左右に広がって揺らぐ感じが強烈です。ロータリースピーカーに出力した音をマイクで録音して左右に広げるなどしているのでしょうか。想像ですけれど。
タイトなアコースティックギターのカッティングが左右にそれぞれいます。わずかに差異があるのですが兄弟のようによく似たキャラクターです。ピタっとしたカッティングが巧いです。
フルートのアクセントが轟き、まんなかあたりから右に残響が抜けていくような気がするのですが気のせいでしょうか。
高い音域に張り上げても繊細で上品なニュアンスを保つメインボーカルの歌唱もまたこのグループの技量の確かさを思わせます。おしゃれでハイクオリティで、曲想(描いている内容)も非常にコンパクト。1曲目として、アルバムの序奏の役割を果たします。さあ、こっから先を聴いてねという感じです。
曲の内容がちょっとほほえましくもあり、さびしくもあります。主人公と、想いの対象のあなたは全然まじわりません。公園につづく路をぬけていく風のにおいを共有している程度の関係です。その風にのって、主人公の想いがあなたに届くことは奇跡のような確率に思えてせつないです。
ネットが基本みたいになってしまった時代を思うと、風を共有しているだけでもとてつもないアドバンテージだとも思います。空気、風の共有ってそれくらい素敵で貴重なことです。主人公とあなたに、春の散歩道の先の豊かな未来があればいいなと祈る気持ちです。
青沼詩郎
『散歩道』を収録したふきのとうのアルバム『ふたり乗りの電車』(1975)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『散歩道(ふきのとうの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)