長いこと待っていたんだ ハンバート ハンバート 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:佐藤良成。ハンバート ハンバートのアルバム『道はつづく』(2006)に収録。
ハンバート ハンバート 長いこと待っていたんだ(アルバム『道はつづく』収録)を聴く
佐野遊穂さんのクリーミィなボーカルが極上です。聴いていてひたすらに気持ちがいい。頭の中がクリームになって溶けてしまったみたいに、ほかに語彙が出てきません。聴く者をとろけさせる甘い声です。
下ハモに佐藤良成さんの歌唱が入ってきます。佐野さんと対照的とまではいいませんが、しっかりとした響きの質量があって、朴訥とした歌声。それぞにキャラクターのある声で、はっきり聴き分けられるうえに合わせて聴いたときの相性も良い。まさになるべくしてなった二人組ですね。
フィドルの音の運びが良いですね。2声部になっているでしょうか、ハーモニックですしリズミカル。どなたが演奏したものか……とWikipediaを見ていたら佐藤良成さんはフィドルも演奏されるとある。『長いこと待っていたんだ』のフィドルの録音も、佐藤さんのオーヴァーダブなのでしょうか。だとすると(だとしなくても)心底多才です。能動的で、場を謳歌した生き生きとしたフィドルがふたりの歌声を彩ります。
バンジョーも佐藤さんが演奏できるようですし、ドラム、ベースもいけるんですね(Wikipediaにみる)。
オフィシャルサイトのディスコグラフィに“「11のみじかい話」やライブでもお馴染みのメンバーに加え、新たに2名の素敵なプレイヤーが参加”とあります。録音の演奏者の全容やいかに。
アルバム『FOLK』(2016)収録
キーがオリジナルのBからCに上がりました。ギター1本の演奏のサクサク軽快なこと。ベースと和音を弾き分けます。フレーズの合間でベースが動くオカズあり。下ハーモニーのボーカルも同時にこなします。この音楽性・編成ですから全部のパートの一発録音でしょう。潔く、彼らの演奏力をありのままに堪能できます。さらっとした一期一会の空気感が録音されていますし、楽曲のメッセージそのままという感じがして真っ白なシャツのように気持ちがいいですね。
歌詞
ずっと夢に見てたことが 今目の前で始まる 僕は夢を見ているのか そうここは舞台の上 たくさんの人がぼくらの うたう歌を聴きに来る 子どもの頃からの夢は まさに始まったばかり
(『長いこと待っていたんだ』より、作詞:佐藤良成)
繰り返すうちにそれは当たり前になってしまます。いつの間にか麻痺してしまう。それが当然のことになってしまいます。
初めて起こることは新鮮なものです。久しぶりに起こることも新鮮でしょう。
期待していたことを迎えるのもどきどきです。ずっと楽しみにしていた日が来てしまうのは、同時にさみしいものでもあります。遠くにあったからこそ憧れるのです。
歌手はステージにのる。うたう。それをお客さんが聴きにくる。当たり前のことかもしれません。
その歌手の初めてのステージだったらどきどきでしょう。ベテランだったら? 何百回何千回とステージを繰り返し、もれなく客席を沸かせてきた百戦錬磨だったら、その瞬間は何千回のステージに埋没して輝きを失ってしまうでしょうか?
そんなわけがない。どの1回とて、1回だけの奇跡の瞬間なのです。
だから、長いこと待ち侘びた最初の1回も、繰り返しの途中の1回も、人生最後の1回も、ステージはきらきらで輝きの塊なのです。かけがえがないのです。
青沼詩郎
『長いこと待っていたんだ』を収録したハンバート ハンバートのアルバム『道はつづく』(2006)
メンバー2人だけで演奏するアレンジの『長いこと待っていたんだ』を収録したハンバート ハンバートのアルバム『FOLK』(2016)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『長いこと待っていたんだ(ハンバート ハンバートの曲)ギター弾き語りとハーモニカ』)