We Can Work It Out 恋を抱きしめよう The Beatles 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲: Lennon-McCartney。The Beatlesのシングル(1965)。
The Beatles We Can Work It Out 恋を抱きしめよう(The Beatles 1962-1966 (The Red Album)収録、2009 – Remaster)を聴く
足踏みオルガンでしょうか、ハーモニウムというのかな。音がふわっと立ち上がってゆるりと音尻がすぼむような輪郭です。リードが鳴る楽器類としてはハーモニカを連想する私で、ピーピーキンキンした音域も出やすいのがリード楽器の宿命な気もしますが『We Can Work It Out』のオルガンのリードの音は至極マイルドです。リード(発音体)が箱に包まれているのがオルガンという楽器の響きなのでしょう。
そして、まるで昼寝中の丸々としたお父さんのお腹がゆったりと上下を繰り返すみたいな息遣いを感じるのです。このハーモニウムの音が千金ですね。これに倣った系の音を世の大衆音楽の中に見出したとき、まっさきにその先行例として思い出すのがThe Beatles『We Can Work It Out』にほかなりません。
左サイドにがっつり振ってあるのがドラムスです。タツっと短く、軽い質量感のスネアでキレがよいサウンドが確保されています。しかしシンバルはドシーンと重い。リッチーのドラムだなぁとしみじみ思わせる対比の際立つプレイ、サウンドです。
高らかなのがタンバリン。ドラムより大きいくらいのバランスですね。チャリチャリと雄弁です。右サイドのハーモニウムと対になります。足踏みオルガンを囲んで、タンバリンを鳴らしながら、教室で数人の仲間が歌っている。そんな微笑ましい光景を想像させるくらいに、このオルガンとタンバリンと歌のサウンドが楽曲の核になっていると思います。ビートルズがただのギターを用いたビートグループでないのがこの楽曲ひとつとっても十分に証明されているでしょう。
ハーモニウムの伸びやかなサウンドと、タンバリンと歌が成す「和」の雰囲気に覆われる私の注意ですが、歌詞のリズムの鋭さが光っています。かなり単語をたたみかけるような凝縮感があり、やはりロックソングとして耳に良しなのです。若い人の恋の歌だと思うのですが、ちょっと大人びた雰囲気もあります。
非ネイティブの中学生の英語の知識で通じる「Life is very short」のフレーズはあまりにも鮮烈です。ポールと作曲部分とジョンの作曲部分がうまく融合した最高の一例だと思いますが、この部分はいかにもジョンらしい達観をさらりと云っている節があります。
2023 Mix(The Beatles 1962–1966 (2023 Edition) [The Red Album]収録)を聴く
華やかでイケメンなサウンドに転生しました。ドラムスの音が現代的です。スネアのタスっというキレはさらに洗練されて短くも感じますし、トガり方がマイルドになったようにも感じます。ドラムが真ん中中心の低位になったのはもう現代のサウンドとしてリフレッシュさせるなら必然的にそうなるよねと思うばかりですが私個人としては昔っぽい極端な低位も洗練されていないところがかえって革新的で好きです。
左サイドの成分はアコギのストラミングが際立っています。ザンザン云う音色。タンバリンはちょっと左サイド寄りかもしれませんが、あまり極端な低位ではない感じがします。チャリっときらびやかさを担わせた音色で、2009 Remasterがロックなパワー感あるタンバリンだとすれば、2023 Mixはやっぱりタンバリンの音色ひとつとってもすっきり洗練されている印象です。
ハーモニウムは右サイド。音色がよりマイルドに感じます。
2023 Mixを聴き出して真っ先におや? と思うのはテンポ感です。あれ? BPM変わってない?! と思うくらいに印象が違います。少しユックリしている? アナログ音源でしょうから、テープスピードによってテンポが変わることがあるのかもしれませんが、そんなことって普通にあるの? とも思いますし真実はどうなのでしょう。私の気のせいであって、テンポまで違うなんてことはないのか。
Mixからして違うわけですから、各トラックに対する処理の仕方、そのプロセッシングひとつひとつの積み上げでまるで印象の違ったものになるのは当然でしょう。その違いたるや、テンポが違って感じるほどのものにすらなりうると……そう自分を納得させようとするくらいに違って聴こえるのです。
青沼詩郎
ザ・ビートルズ | The Beatles ユニバーサルミュージックジャパンサイトへのリンク
『We Can Work It Out(恋を抱きしめよう)』を収録した『The Beatles 1962-1966 (The Red Album)』(1973)
ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『We Can Work It Out(The Beatlesの曲)恋を抱きしめよう ピアノ弾き語り』)