『翼をください』に、ピアノの伴奏で合唱する曲というイメージを持っていた私。イントロのコード進行からまるで違い、エレクトリック・ギターやバンドの音が全面に出た上の映像を見てぶったまげました。なんてロック!
エネルギーのこもったドラムスに見入ってしまいました。
『翼をください』の原曲が赤い鳥というグループにあるというのは大人になってからなんとなく知っていましたが、グループについて詳細を求めないまま来てしまっていました。
パワフルなストロークを見せるドラマーは「ポンタ」の愛称で親しまれる村上秀一氏。中学生の頃の私は、彼が『翼をください』をパフォーマンスした赤い鳥のメンバーであったということも知らずに、彼の名前が冠されたモデルのドラムスティックを購入して使用していました。
冒頭に貼り付けた映像のロックな『翼をください』。私はビートルズをビンビン感じます。前列のメンバーのポール・マッカートニー然としたファッションもそうですが、サビのフレーズの4小節目・8小節目にあらわれるⅦ♭のコード(Cメージャー調なのでB♭がそれにあたります)。これを作詞・作曲・編曲・著述家で、私の知るビートルズ愛の人・野口義修氏は「マッカートニー・コード」と呼ぶほどです(参考:『ポール・マッカートニー作曲術』)。
あらゆるものに影響を与え、時代の空気に同化してしまうほどの世界的な変革のきっかけになったビートルズ。ですから、ロックな『翼をください』をパフォーマンスした赤い鳥のみが、特にビートルズを意識してこうしたファッションや音楽で出たというわけではないのかもしれません。それは80年代生まれの私にはわかりきらないところがあります。タイムマシンがあれば60年代〜70年代は行ってみたい時代のひとつです。
赤い鳥の『翼をください』。1971年に、シングル『竹田の子守唄』のB面、アルバム『竹田の子守唄』に収録されました。ライブ時やバージョンによってはアレンジ、歌詞の割愛の仕方に違いがみられます。作詞:山上路夫、作曲:村井邦彦。
カノン風のコード進行ですが先に述べたようにⅦ♭を使ったり、分数コードづかいが妙です。1番の平歌“叶うならば”、2番の平歌“いらないけど”と歌うときのⅰ上のⅡM(コードネームでいえばD/C)には浮遊感があります。地上をふわっと離れた感じ。
“悲しみのない自由な空へ翼はためかせ”(『翼をください』より、作詞:山上路夫)
地上にはいったいどんな悲しみがあるというのか。空こそが自由とも限らない。それをわかったうえで歌っているかのようでもあり、理想郷のはかなさ、遠さを強く思います。中学生の頃の私はそんなことを思いもしませんでした。それだけ地上を行ったのかしら…私も。
青沼詩郎
『翼をください』を収録した赤い鳥のアルバム『竹田の子守唄』(1971)
赤い鳥の『翼をください』のライブアレンジにみるようなコード進行は、ポール・マッカートニーの作曲にも近いものが見出せます。
ご笑覧ください 拙カバー