祭りが嫌いだ。なんたって暑い。暑いのが嫌いだ。この点についていえば、祭りが嫌いなのは嘘だ。暑いのが嫌なのだ。暑い時期にやりがちなだけで祭りのことまで嫌いになってしまう。祭りは無罪だ。

彼からのとばっちりを食らうなんてさぞかし祭りもつらい。彼から嫌われるのは、マサイ族長のお気に入りの食器からピーナッツをくすねるようなものだ。一粒くらいなら大したことはない。

祭りが嫌いな理由はほかにもある。まずあのチョコバナナだ。屋台が売っている串に刺さったなだらかに湾曲したブドウ糖質の鯨だ。イルカだったとしてももう遅い。

あんなものを食べたら口の周りが汚れるに決まっている。汚れた口で麗しい恋人にキスしろとは不粋だ。恋人の心の広さは那由他不可思議だけど無尽蔵に蔓延る空ペットボトルをしらみ潰す恨みつらみで政に及ぶのは前時代的過ぎる。閻魔級のとばっちりがお似合いだ。彼から嫌われる愚はコンビニで煙草の販売を不当に拒否される苦痛と釣り合う分銅と従弟関係なのだ。閉店した理科実験道具屋に送った請求書が宛先不明で却ってくるのは再従兄弟だ。公園の蛇口の水を飲めばごみも出ないし出させない。なぜ資源ごみの日を偽った? 官報はあいづちして未開封のまま却してやる。正論は凶暴だ。反論はご飯のおかずに丁度いい。スリランカの紅茶はこごめてCTCにしてしまえ。

祭りは人出が多い。美形の来訪客に目配りしてやる。じっとりと絡みつく視線を気持ち悪がる精神苦痛は残り僅かなレシートのロール紙に赤インクを見つけた開店したてのバイト従業員の憂鬱だ。その顔面をトイレを拭きたてのモップで16分割する制裁は御免だ。彼は望みの外側で隠密にウィンクを送る。両瞼のアクセント移動は毎月の奇数木曜日に最寄の警察署付近のドッグランで調教済みだ。催眠術のトリガーは引かれた。使命を遂行するほどに夜王のストッキングに亀裂が走る。乱痴気騒ぎのバニーガールを連れて明け方の日本海に唾を飛ばし演歌を叫ぶ矛盾と競争だ。骨の髄まで吸い殻じみた祭りが夕凪に揺らいだ。

祭りの路上は中世のパリだ。彼は寝ぼけた蟻へカチコミの脅威を与えるべくかき氷を食べこぼす。お好み焼きの鰹節を風に乗せて壮年の春の綿毛のシルエットを大学ノートの罫線に乗せる。蒸発したビールの匂いを漏らす無防備なプラカップは幾星霜の文明が滅亡する度に絶滅危惧種に再指定を受けチラシに載って白い歯を見せている。セミの鳴き声と築地の魚を売る親父の目の永眠は続く。言葉の振れ幅の過失に怒り震える被害者遺族。被告の詩は悪趣味すぎた。歌手が歌を歌う理由はワゴン売りのポップソングが3分で終わる1966年からおよそ10年程度の相場が物語る。切符に切れ込みを入れる駅夫とベッド・インしてみろ。白夜の国に移住して納税するマインドはオルタナだ。北がなければ南がない苦痛もない。捨て曲に愛を注げばブルースが派生する。

隠遁した黒曜石はヘヴィメタに涎を纏わせる。聖書の意味を噛み砕いた巻物を敷け。好事家が踊り狂いスピーチバルーンの内側で眼鏡を突き破る元ネタはピノキオの鼻だ。ワームホール越しの大正時代の味噌汁の鰯の角度に南極のオットセイが同調する。虫唾がマイクロフォンを伝ってホット・コールド・グラウンドを走る。筆ペンは筆なのかペンなのかはっきりしろ。風に舞うお好み焼きの鰹節か茄子の煮浸しに添える椎茸干しか、先に見つけたいずれかにガラスの靴を落とす養女を託そう。

彼は祭りで恋人に会うが、骨董品屋での古代のプレイステーション探しに耽るあまりデート前のトイレが後手になっている。乗る予定のバスは股間のチャックを開き待っている。尿意をこらえる背中に両面テープで低周波を貼り付ける。愛と執着の要人会議は苦行のあまりに吐き気を催す。透明なグランドピアノが響けば灰皿の残り火を山盛りのココアパウダーで消沈するより仕方がないが、遅刻して家で済ます手もある。

彼は恋人を探して人波に沿って目を動かす。公衆トイレの落書きをミュートして壁の向こうを透視する。

彼の恋人の秘書は有能だが遠視がきつい。主の出張は五カ年計画だと説明する秘書の話は飛躍がきつい。批判を呑み込む度に喉に病原菌が付着して溜まる。秘書は井戸端に面した勝手口にまで警備会社のシールを貼っている。昨夜は鍵もかけずにサウンドホールにテキーラを注いだ手前、通報先のローディーまでもが青い顔で宅配を受け取る。この世の地獄に望む身代金などテントウムシの被り物をした看守の頭にアブラムシが涌こうが広辞苑ほどの重みすらないのだ。

彼は恋人の頭のサイズを当てるクイズに挑む。

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牛だくの牛丼にX線を照射。

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ガソリンが底を突く。

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