青春 THE HIGH-LOWS 曲の名義、発表の概要

作詞・作曲:真島昌利。THE HIGH-LOWSのシングル、アルバム『Relaxin’ WITH THE HIGH-LOWS』(2000)に収録。

THE HIGH-LOWS 青春(アルバム『Relaxin’ WITH THE HIGH-LOWS』収録)を聴く

最高に爆発的な音が詰まっています。傑作ですね。

非常に早いテンポでベースやキックがエイトビート。ベースの音もキックの音もファットです。スネアの爆発力よ。

Aメロの音の引き算がいいですね。最初のあたりなんかほとんどギターも入らずドラムとベースとボーカルだけみたいな箇所も。

オルガンがまるで肯定の桜吹雪か、こもれびか。神々しくきらびやかです。

ギターをAメロでたくさん引き算したかと思えば、一気に左右からエッジのあるサウンドのギターが爆裂。さらに左側トラックからチョーキングでずり上がるアッパーカットのような相槌が突き刺さります。瞬間的に3本のギターが同時に鳴っているも、タフなベーシックがいくらでもウワモノを許容します。

2コーラス目あたりで「ディーンドーン……」と学校のチャイムのような音形をギターとオルガンが表現します。学校生活を抽出して描く歌詞の内容と相まって鑑賞者の記憶を喚起します。

間奏ではもうなんだかわからない轟音で思い出と混沌の深淵に連れ去られてしまいます。現実でこの曲を聴いている私の部屋の窓の外から何かの環境音が飛び込んできた?! かと思ったのですが音楽のなかに込められた演出でしょうか、なにやらスプリンクラーが吹き上がるような、あるいはスプレー缶で内容物を噴霧するような「フシュァァアアア!」という音が入っていませんか? 私の幻聴じゃないよね? なんの音か正体が気になります。青春のエネルギーの間欠泉の弁が内圧に耐えかねてぶっ飛んだみたいです。私はもうなんかオシッコ漏らしそうだよ。

エンディングでバンドが最後の音をうつと、伸びている音をバッサリとカットして次曲へ行くアルバム『Relaxin’ WITH THE HIGH-LOWS』の編集がまた潔くてカッコイイ。リラックスしてる場合じゃないぞ。

季節を視る歌詞

冬におぼえた歌を忘れた

ストーブの中 残った石油

ツララのように尖って光る

やがて溶けてく 激情のカス

『青春』より、作詞:真島昌利

歌を忘れるという表現、それからストーブに残った石油の情景が冬からの時間の経過を思わせます。寒い時期の風物詩は時とともに溶解してしまう。胸のなかにかつて固形があったスペースだけが残って……この空間には何があったのか自分でも不思議になる、ぽっかりとした喪失感なんかを想像します。激情すらも、ノド元をすぎればその摩擦のすさまじさを忘れてしまうのか。

渡り廊下で先輩殴る

身に降る火の粉払っただけだ

下校の時にボコボコになる

6対1じゃ袋叩きだ

鼻血出ちゃったし あちこち痛い

口の中も切れた

リバウンドを取りに行くあの娘が

高く飛んでる時に

『青春』より、作詞:真島昌利

このフレーズ、テレビの音楽番組で、この楽曲の発表当時にリアルタイムで見て記憶に強く残っているのです。たしか「Mステ」だったんだよなと検索してみるとそのとおりのようです(参考リンク>テレビ朝日サイト MUSIC STATION 出演者ラインアップ 2000.06.16.FRI)。

非常に映像的で、バスケをするあの娘の跳躍をとらえた主人公(?)の目線、その一瞬がスローモーションに思えるくらいに高密度に映し出されて思えます。“6対1じゃ袋叩きだ”なんてフレーズを歌詞に含めた、この世で唯一無二のロックンロールではないでしょうか。私の凡庸な人生とはなんと程遠い修羅場なことか……!

先に先輩を殴ったのは主人公のほうで、それに対する復讐が“6対1”の袋叩きなのでしょうか。でもそもそも最初に火の粉をふっかけたのが先輩のほうだから、主人公の殴打は火の粉に対するカウンターなのかもしれません。先輩がふっかけた「火の粉」の詳細はわかりませんが……ヤメようよ暴力の連鎖はマジで……と怯える私。

“骨身をさらけ出したその後で 散文的に笑う” (中略) “心のないやさしさは 敗北に似てる 渾沌と混乱と狂熱が 俺と一緒に行く”(『青春』より、作詞:真島昌利)

具体的な情景描写の量が嵩を占めますが、観念的なまなざしがときおり宙に浮かびます。情景へのピントをぼかしたり、切り替えたりして映像で第六感を演出するみたいな言葉の独創性がバチバチにタフなバンドサウンド・緻密で鋭利なギタートラックの構築に大蛇の如く絡みます。

校庭の隅 ヒメリンゴの実

もぎって齧る ひどく酸っぱい

夏の匂いと君の匂いが

まじりあったら ドキドキするぜ

時間が本当に もう本当に

止まればいいのにな

二人だけで 青空のベンチで

最高潮の時に

『青春』より、作詞:真島昌利

ヒメリンゴの実を摘むなら秋がその頃合いのように思います。夏を回顧する秋の状況なのか。あるいは、未熟ですっぱい実がなっている夏のさなかなのかもしれません。夏の匂いと君の匂いの混濁に脳がとろけてしまいそう。暑さのせいでしょうか?

青空のベンチは、晴天のもとのベンチかもしれないし、空のように青くペイントしたベンチかもしれないし、あるいは二人だけで最高潮の時間をすごすイマジネーションを空中に投影した象徴が“青空のベンチ”なのかもなぁと想像します。THE BLUE HEATRSの楽曲に真島さん作詞作曲の『青空』という傑作がありますが、そのAU(Alternate-Universe)かもしれません。

青沼詩郎

参考Wikipedia>青春 (THE HIGH-LOWSの曲)

参考歌詞サイト 歌ネット>青春

↑THE HIGH-LOWS↓ ザ・ハイロウズ 公式サイトへのリンク

『青春』を収録したTHE HIGH-LOWSのアルバム『Relaxin’ WITH THE HIGH-LOWS』(2000)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『青春(THE HIGH-LOWSの曲)ギター弾き語り』)