教訓めいた話だったとは

切り株に衝突して死んだうさぎを得てごちそうにありついた農夫が味をしめ畑仕事をさぼり兎が勝手にふところに舞い込むのを待ちぼうけしていたら当然の因果として日々の畑仕事の賜物たる農作物も得られなくなり都合よく兎が日々自分のために死んでくれるでもなくああ馬鹿だねみんなはアノ農夫みたいになっちゃいけないよというお話が童謡としても有名な『待ちぼうけ』の真実だったと知ってしまった私は何気なく刷り込まれて記憶にあるこのメロディを今後思い出すときは皮肉をいっぱいに込めて歌うことになるでしょう。

待ちぼうけ 童謡・唱歌 曲の名義、発表の概要

作詞:北原白秋、作曲:山田耕筰。1924年、満洲唱歌として発表。

童謡・唱歌 待ちぼうけを聴く

錦織 健(『砂山~山田耕筰作品集』収録)

輝かしく朗々とした声、輪郭のあるまとまりのある響き。ふわっと、すぅっと残響が舞って長めに残りながら霧散していきます。収録したホールの自然な残響でしょうか。ピアノとテノールの必要十分な前後感。いずれも輪郭と距離感のバランスが良く最上の座席でホールで聴く擬似体験をしている気持ちになります。

4番の歌唱でテンポが緩み待ちぼうけ感を表現したのもつかのま、すぐに元のテンポを取り戻します。偶然のおいしい話に怠けた愚かさを軽く笑うかのようです。

軽やかで品のあるタッチ・音色・緩急が妙なピアノ伴奏は河原忠之さん。収録ホールまではネット検索でわかりかねました。

美空ひばり(『美空ひばり カバーソング コレクション~叙情歌をうたう』収録)

オーケストラと全員で1発録音したようなエンディング付近のリタルダンド、歌唱のタメとぴったりついていくオケ伴奏、コミカルだが軽妙で気品を損ねない範囲での皮肉り・茶目っ気を含めた明るい歌唱が絶品です。

編曲がおもしろい。チェロがすぅっと品よく糸を引いたかと思えばズゥンと入ってくるエレキベースは歌謡曲のサウンドのそれ。右側には撫でるようなアコギがダウンストローク。対になるピアノは左側で、非常に抑制の効いたタッチでペンタトニックスケールの薫りを奥ゆかしく撒き散らします。

爆裂な存在感をはなつリコーダーのアンサンブルが丸く際立つサウンドです。待ちぼうけ感にはこのリコーダーのサウンドが必要だったのだ。ちーんちーんと右側に開いたトライアングルがぽつねんとした嘲笑感を強めます。実に面白い。妙演です。編曲は半間巖一(ハンマガンイチ)さん(参考タワーレコードサイトへのリンク)。彼をたどると……マンドポップとかビート歌謡とかいろいろまた広がります。編曲って沼。

青沼詩郎

参考Wikipedia>待ちぼうけ (唱歌)

参考歌詞サイト 歌ネット>待ちぼうけ

『待ちぼうけ』を収録した錦織健の『砂山~山田耕筰作品集』(2000)

『待ちぼうけ』を収録した『美空ひばり カバーソング コレクション~叙情歌をうたう』(2010)

ご寛容ください 拙演(YouTubeへのリンクShiro Aonuma @bandshijin『待ちぼうけ(童謡・唱歌)ウクレレ弾き語りとハーモニカ』)