ソウル・フラワー・ユニオン、赤い鳥…
最近頻繁にソウル・フラワー・ユニオンの作にふれた。
アイリッシュ・ブズーキを広めた功労者、ドーナル・ラニーとの共同名義でリリースしているSOUL FLOWER WITH DONAL LUNNY BANDのアルバム『MARGINAL MOON』(1998)は『満月の夕』『潮の路』『アリラン』『夜に感謝を』とならんで『竹田の子守唄』を収録していて私のお気に入り。民謡の旋律を堪能できる1枚。
以前このブログで赤い鳥『翼をください』を取り上げた。『翼をください』を私は合唱曲として認知していた。いや、「〇〇として」という畑の分け方を自分の中に持つ以前に、すでに用意されていて触れたというのがより精確か。何せ、学校で扱う教科書や歌本・コーラス本でこの曲が扱われていたくらいだから。
その『翼をください』は赤い鳥というグループが世に送り出したものだというのは近年になって知ったことだった。彼らについて私の知識は浅薄で、コーラスグループ、あるいはある時代を担ったフォークミュージックの一派かという程度のひどく粗雑で乱暴な認識でいた。
今年(2021)になって私は、赤い鳥が『翼をください』をライブでパフォーマンスする映像を観て、その甘い認識はふっ飛んだ。ヘヴィなサウンドはロックそのもので、熱い演奏だったからだ。ドラムスは「ポンタさん」で有名な村上秀一。私に電撃が走った。そんな果敢アプローチを持っていながら、コーラスの調和も超一級だ。
竹田の子守唄
赤い鳥の『竹田の子守唄』は『翼をください』をB面に収録したシングルでもある。原曲は京都・伏見の竹田に伝わる民謡。
「子守唄」と題にあるが、幼児を寝かしつけるための唄ではない。幼児の世話をする奉公者たちの哀歌のようなものらしい。歌詞をみると、確かにそのような情感や曲想が読み取れる。よその家(裕福な家?)の幼い子の面倒を見に親元から出てきている、若き「守り子」の唄。子どもの面倒を見ているのもまた子どもなのだ。
この曲は背景が複雑で広漠としている。Wikipediaでさえ混み入ってみえる(いや、Wikipediaだからか)。
現地の人に歌ってもらって採譜した人(尾上和彦)がいて、それが広まったようだ。「元唄」と呼ばれるものは旋律も歌詞も全然違う。どう採譜したらこうなる(赤い鳥ほかが歌ったような曲になる)のだろう。
「元唄」にあたるのはこれか。旋律や歌詞が果たしてどの時点でどのような形だったのかが私にはわかりかねる。奥深く、惹かれるテーマ。こちらの解説が参考になった(世界の民謡・童謡)。
J-WIDで「竹田の子守唄」を検索すると該当が51件(本記事執筆時)。口承の民謡であると同時に職業歌手にもいかに歌われているかがわかる。パブリック・ドメインだ。
一青窈にもカバーされている。彼女の声で聴く哀愁ある旋律は格別。
「赤い鳥ただ1曲のヒット曲」と自負?する自虐ジョークのMCからはじまるライブ音源 。
『竹田の子守唄』を収録した赤い鳥のアルバム『竹田の子守唄』(1971)
ご笑覧ください 拙演
後記
竹田の子守唄についていて検索していて頻繁に出てきた単語が「被差別部落」。これは京都・伏見竹田だけでなく世界中あちこちにあるだろう。歌が歌以上の意味を持つというか…本来歌というのはそういうものかもしれないと思いつつ、私は純粋に民謡の旋律と言葉を味わっている。実際そのように音楽に魅了され多くのミュージシャンが演奏してきた側面もあるだろう。当の赤い鳥メンバーらですら、人前での演奏や発表をしたあとにその影響の大きさや背景の深さに気づいた…といういきさつもうかがえる。歌う意味ってなんなんだろう。私は先ずは何より、自分のために歌っているが。
青沼詩郎