革新と回顧の邂逅
17番目のシングル曲とのことで、キャリアがモリモリ伴ってきているタイミングの発表曲。情報量がすごい!シンフォニックです。
シャープ二つ系のBm調はじまり。ボーカルのポジションが高く、メロディアス。月並みな言葉でいってしまえば、歌謡とメタル・ハード/ヘヴィロックの折衷か。
スポ根アニメのような勇ましさ、かと思えばピアノなど鍵盤楽器が醸す乙女趣味、バロック趣味も感じますし早いパッセージにプログレ感も漂います。可憐でありながら突貫力に秀でます。宇宙規模のスペクタル感、光のようなまっしぐらな直線性とスピード感をともないます。
たとえ500マイル離れても……との歌詞表現を含みますが、宇宙の規模からみると500マイルは非常に現実的で、どうにかなる距離です。でもこの楽曲のなかで豊かな音楽上の情報・意匠にのせていわれると、とても光年規模でかなわない距離かのように響きます。つくづく魔力が高い……どんな音楽にどんな言葉をのせるか、そのかけあわせの無限の可能性の一例を実証する絶妙さです。
Bm調ではじまりますが途中で半音上に転調。♭3つ系の世界観になります。
アコギの開放弦をいかしたフォーキーなアプローチですと半音転調はやっかいですが、エレキギターのハイポジション中心であればむしろ容易です。彼らのエレキギターを用いたロックアプローチを活かしたうえ、さらなる高揚感を得るエモーショナルなアレンジメントといえます。
間奏の転調がまた混沌の旅。Bmのシャープ2つ系で来たところから、短3度上、すなわち♭1つ系……Dmの世界観になります。時空を捻じ曲げる転調世界での間奏も8小節間のつかのまの旅で、また元のシャープ2つの秩序に戻って英語で500マイルを表現したサビに接続、8小節のサビセクションを経て半音転調(Cm)の世界に接続し新たな地平を望みつつAメロセクションパターンに帰結する、という経過になります。転調を経てのAメロへの帰結は新境地を獲得しているのにどこかなつかしくも響く絶妙な楽曲構成だと教えてくれます。
ポップソング1曲のなかで宇宙規模の旅をしているみたいな混沌と革新とエモーションが詰まった傑作。何度でも光年を飛び越えて聴き返してみてください。
星空のディスタンス THE ALFEE 曲の名義、発表の概要
作詞:高見沢俊彦・高橋研、作曲:高見沢俊彦。THE ALFEEのシングル、アルバム『THE RENAISSANCE』(1984)に収録。
THE ALFEE 星空のディスタンス(『BEST SELECTION I THE ALFEE』収録)を聴く
わたしにプログレを思わせるのは教会の天井に届きそうなサイズを思わせるキラキラしたオルガンの音色なのかもしれません。
エレキのハイポジを活かした曲想のイメージでしたが、改めて聴いてみると左側定位にチャキチャキとずっとアコギのストラミングが入っています。楽曲のイメージを先導する存在では決してありませんが、局面がめまぐるしく移ろう混沌とした曲想において、このアコギがずっといてくれているのが理性を保てる秘訣かもしれません。
さて、リズムのキメが常に伴う曲想です。ベーシックが定型パターンを繰り返すシーンなど、Aメロの冒頭4小節に限定されるのではないでしょうか。それ以外の場面ではほぼすべての瞬間において、何かしら食いや移勢(アウフタクトやシンコペーション)、リズムのキメ、ブレイクや「伸ばし」で常に変化がつけられています。安堵できる瞬間などない。常に成長を求められ、応え、超えていくのが銀河の旅人に課される使命なのです。ドラムスのフィルインなど一体どうなっているのか。オルタネイトとキックの組み合わせで上下左右に揺さぶるロデオのようなパッセージ。ラスボスを倒したと思ったらまだ真のラスボスが次々と出てくる気分です。終着地と出生地は常に同一なのだ。
楽曲の後半、転調後の桜井さんのギリギリまで張り詰めるボーカルの緊張感と全霊の精神が私の心を震わせます。
エンディングのギターソロは非常に速く技巧的なパッセージに満ちていますが、よく聴いてください、Aメロのリードボーカルメロディを「変奏」したような、モチーフの原型その骨格の特徴がわずかに認知できる箇所があります。技巧をひけらかすなんて安いことは楽曲のためになりません。アルフィーの音楽はどこまでも楽曲の精神をあらゆる楽器や声を総動員し常に絶唱、歌っているのです。こんな銀河バンドは宇宙で唯一無二でしょう。頭がさがる思いと同時に、面が上がる希望をくれます。
青沼詩郎
参考Wikipedia>THE ALFEE、星空のディスタンス、THE RENAISSANCE、BEST SELECTION (ALFEEのアルバム)
『星空のディスタンス (Long Version)』を収録したTHE ALFEEのアルバム『THE RENAISSANCE』(オリジナル発売年:1984)
『星空のディスタンス』を収録した『BEST SELECTION I THE ALFEE』(オリジナル発売年:1984)