可能性の地平
「(……)愛なんだ」とまっすぐに音程を連ね愛に結びつけることで計り知れない愛の無尽蔵な可能性、博い器を描いていて純白でさわやかな印象です。
ほとんど1オクターブにリードボーカルの使用音域がおさまってしまい、メンバーの声の響きの安定がはかりやすくハーモニーやオケもつくりやすい楽曲の意匠も曲名の通りうつわが博(ひろ)いでしょう。(SUPER EIGHT『ズッコケ男道』を観察したときにも通ずる共通点を覚えました。https://bandshijin.com/zukkoke-otokomichi/)
ジャニーズ音楽というくくりはもはや崩壊したレッテルかもしれませんが、ジャニーズ音楽といえばこういうサウンドだよねという印象をつくったキーパーソンは本曲の編曲者のCHOKKAKU(島田直)さんではないでしょうか。そこにブルースハープのサウンドも融合されていて、ブルージーでヨゴシの聴いたフィールが楽しめるのも本曲のリスニングの魅力だと感じます。
愛なんだ V6
作詞:松井五郎、作曲:玉置浩二。V6のシングル、アルバム『NATURE RHYTHM』(1997)に収録。
V6 愛なんだを聴く
人間の生演奏バンドで再現できそうな編曲がガツンときます。こういうのが好きです。
チャカポコチャカポコとエレキのカッティング。ワウがかかっているところもあります。アコギのリズムもタイトで楽曲のグルーヴの重役を担います。ドラムの16のグルーヴも含めバンドの音像がドライでくっきりしています。タイトな解像度のグルーヴを、カウベルの1小節4つ打ちのストロークが平易にする目印をくれます。ベースがワイルドでスラップめいたサウンドがヤンチャです。ブラスのオブリガードが細かく絡み余念なし。
ボーカルのAメロの歌い出しなどは単一のテクスチャーですがハーモニーやダブルがつく場所が割合的には優位です。中間部のラップの部分までユニゾンのダブルになっているのはいかにもなジャニーズ音楽的ラップアプローチを感じさせ衝撃的です。ラップを複数のトラックによるダブルやユニゾンにしちゃうのって、元々の畑とおぼしきヒップホップにおけるラップやそれに感化されたロック畑のラップで聴けることはどちらかといえば稀ではないでしょうか。少なくとも私はあまり聴いたことがありません。男子の複数の……ちょっと辛辣な口ぶりをおそれずにいえば年頃の普通の(容姿のすぐれた)男の子たちによるパフォーマンスでダブリングあるいはユニゾンの集合音になったラップの声のサウンドは、ジャニーズ音楽の独特のアイデンティティであるとすら思えます。嵐の『A・RA・SHI』(1999)のサウンドも思い出しますね。トガったアティテュードを感じる音楽スタイルを雑多にとりいれて抽出したサウンドを身近な存在としての国民的アイドル然としたシンボルが一般リスナーの耳に届けている様相、とくに平成時代まっただなかの2000年前後くらいの時代性を私に強く再認識させてくれます。バンドのオケサウンドのリズムが非常にカッチリしているのもなんだかスタジオエキスパートと身近なシンボル(アイドル)のかけあわせからなる独特の振れ幅、揺らぎ、ここちよい違和感(半周まわって調和感)になっているかもしれません。SMAPのサウンドなどにもそういう趣があったなと平成時代を回顧して思います。
玉置さん・松井さんによる安全地帯的「イイ歌」クオリティ保証の中間部にラップパートが刺激を与えます。ラップ明けのサビを経て「あきらめない ふりむかない かならずある そう」のところに至って半音上の調へ高揚(Cメージャー→D♭メージャー)。光GENJI『勇気100%』の楽曲終盤の転調の高揚感を思い出します(転調の仕方は厳密には結構違っています)。
エンディングはガッチガチにストイックなリズムがやんで、アコギのちゃらーんという響きとブルースハープのヨゴシが残って終結。場面転換が粋です。
青沼詩郎
参考Wikipedia>NATURE RHYTHM、愛なんだ
シングル『愛なんだ』(1997)
シングルバージョンの『愛なんだ』を収録した『Very Best』(2001)
アルバムバージョンの『愛なんだ』を収録したV6のアルバム『NATURE RHYTHM』(1997)