輝きをもって悪態をつこう
ダイアトニックコードとボーカルハーモニーがきれいに響き映える人懐っこくシンプルなメロディを笑って蹴飛ばす佐藤伸治さんのあばれん坊でパンチのあるリードボーカルがチャーミング。
太陽のように明るい曲想ときらびやかなバンドの演奏が構築するコントラストに秀でます。
コーラスは8分音符を基調にし、ヴァースは16分音符を貴重にした歌メロディにメリハリとキャラクターに豊かさがあります。
ベースのグルーヴが16分割でドラムは1、2、3、4拍のおおらかなピッチ(間隔)を強調し、音の隙間にタンバリンが輝かしい光子を注ぎ込みます。
1992年のセカンドアルバムに収録されています。10秒未満で終わってしまうトラックや、オケトラックを背景に曲目紹介をしだすトラックが含まれるかと思えば本曲のような希望と愛嬌と哀愁の漂う美メロ曲も含まれる、泣いたり笑ったり忙しいような楽しくて豊かでヘンテコでひねくれていてフックと美しさに満ちたアルバムです。
誰かを捜そう Fishmans 曲の名義、発表の概要
作詞・作曲:佐藤伸治。Fishmansのアルバム『KING MASTER GEORGE』(1992)に収録。
Fishmans 誰かを捜そう(アルバム『KING MASTER GEORGE』収録)を聴く
佐藤さんのリードボーカルの、満面の笑顔で悪びれてみせるみたいな振れ幅あるキャラクターが素晴らしいのは言わずもがなですが、バンド単位でのリズムのレイヤーの多層性が素晴らしい。バンドや音楽を愛好する全人類けもの畜生に聴いてほしいです。
ドッ、カッ! と、キックとスネアが1・3拍目を強く強く打ち出します。その1・3拍目の強い比重にうなずきをあたえるようにアクセントをつけて、ハイハットが8分割、タンバリンが16分割の目盛りを敷きます。
ぶいぶいと太く質量があって気持ちいい音色のベースが8分割を押し出しつつも16分割でぐいぐい歌います。ヴァースのエレキギターは16分割単位の裏拍にアクセントをつけてチャキチャキと歯切れ良く、かつ心地よいドライブ感で分割の単位や質感を肉付けします。ポピポピっと耳にやわらかなオルガンの音色が愛嬌を増し増し。
バンドが縦方向の分割単位に多様にアプローチし、そこにボーカルトラックが横の流れを与えます。シンプルにシンガロングを誘う愛嬌あるキャラクターのサビ。ヴァースは対照的に16分割で、「インチキ野郎が多過ぎて街カドでつまずきそうだよ」などと心の中で立つ中指を誘います。そしてサビは「誰かを捜そう」でまた肩を組む気分にさせる。
「偽悪者が歩いてるんだよ」と、「偽善者」という慣用表現・単語にカウンターするなじみのない造語をフィットします(たぶん私は今初めて人生で「偽悪者」の単語を発音します)。ワルぶってるけどホントはいいやつといった含蓄を思わせます。誰しものなかに「自分、そんなにデキた人間じゃないっす」とか謙遜していても、客観的にそいつのおこないをみているときれいな心が透けて見えることもあるでしょう。ろくでもない人間であるふるまいをしながら悪事を自覚して振る舞っていても表面が「ガワ」(かぶりもの)であるのが他人から見てわかってしまうことがあります。
善良な自分を。善良な心を。善良な関係を築ける善良な者同士を捜そう。理想を求めながら、楽曲はさながら「かえるの歌」の輪唱のようにボーカルレイヤーが重なってにぎやかにフェード・アウトしていきます。見つかりそうかい。
青沼詩郎
参考Wikipedia>KING MASTER GEORGE
Fishmans official website | フィッシュマンズ公式サイトへのリンク
『誰かを捜そう』を収録したFishmansのアルバム『KING MASTER GEORGE』(1992)