君と僕の愛を証明する新記録

それがいかに長時間であるかをうったえる固有の時間数が主題。

きっかり「2時間35分」であることに実は固執した意味はなく、君と僕が愛を証明する新記録をうちたてた素晴らしさを語り、表現しています。

固有の数字は気持ちよく叫ばせてくれる発音、音韻であることには一定の意味があり、歌唱のしやすさ、響きや字脚の音楽へのはまりかたさえよければほかにも代替のきく固有の数字(時間)は存在しうるかもしれませんが、この楽曲における君と僕の打ち立てたのはほかでもない2時間35分であり、主人公にとってこの数字が思い入れのある「言葉」のように意味をもつ記号になっているようです。

電話をジコジコ、リリリ……とかける音のサンプルからはじまり、エンディングには男女の通話の甘いもにょもにょした話し声のサンプルがフェードアウトするバンドのオケにクロスして楽曲がフレーミングされます。

コントラバスタイプのベースで演奏されているのもあってかコードの輪郭が曖昧な印象、あえてすわりの悪いふわふわとした響きの展開を求めにいっているような音楽の意匠は、新記録をうちたてたことに鼻高々になってしまうような恋の盲目性、うわつきを表現しているみたいにも思えて絶妙です。金管楽器も入っていて、ただのガチャガチャしたフォークミュージックともことなる、初期のRCサクセションのサウンドのアイデンティティの豊かさを語る論拠のひとつとして本曲を推したいですね。編曲はキャンディーズ作品にも実績がうかがえる穂口雄右さんによるものとのこと。

2時間35分 RCサクセション 曲の名義、発表の概要

作詞:忌野清志郎、作曲:肝沢幅一。RCサクセションのアルバム『初期のRCサクセション』(1972)に収録。

RCサクセション 2時間35分を聴く

シャカシャカしたギターをドカンと質量のあるベースがのせます。左右にバックグラウンドボーカル、金管楽器がひらいて和声をささえます。管楽器のリズムが案外こまかい。ひだりにサックス、右にトランペットの類でしょうか。

エレキギターもなく、個別のバックグラウンドボーカルの描線の質感がそれぞれにわかるよう。ボーカルの質感がトガっているんです、耳が痛いとかじゃなく、態度、アプローチとして。

調性の解釈をしいるのであればGメージャー調かなと思います。音楽理論的な結論が出る感じのきっぱりとした和声進行のまとまり、カデンツのニュアンスが希薄です。あの話をしていたかと思ったらなんだか無策に話がそれていく。長時間の電話をしている、その体験自体が愛の賞味なのです。とりとめがない。

途中で2/4拍子+4/4拍子、あるいは合算して6/4拍子のような変拍子があらわれます。ボゥーン、ボゥーンと振り子時計が時刻を逐一告げます、この音をこの通話をつづけながらあと何回迎えてやろうかという野心が燃えそう。

「ぅおー 君と話した」……←ここがAセクション、

「新記録が出た」……←ここがBセクション。

このAとBに逐一、主題の「2時間35分」というフレーズがまとわりつきます。テレビのチャンネルをザッピングするみたいに、ふたりの話はあっちいったりこっちいったりしたかと思えばまたふと戻ってもくる。そんなとりとめのなさと想いのつながりの秩序を感じさせます。

楽曲の中盤をすぎると大仰な2拍3連のリズムのキメ。長電話をしていたら救急車でも通ったのか、みたく音楽の景色に変則をきたします。気の短い人の長電話、という感じにせかせかと話が展開し、こまかい変化をいちいち迎えているのですが、ずっと同じところに居続けているようでもある。そんな緊張感と恒常性を両立した不思議な味わいです。

“Woh, 君は すばらしい 言葉を忘れそうだよ 2時間35分”(『2時間35分』より、作詞:忌野清志郎)

この部分、最初「2時間35分」の固有の時間数をふたりの愛を証明するすばらしい言葉、すなわち愛の合言葉、固有のおまじないの文句・呪文みたいに扱っているように感じたのですが、別の読み筋に気付きます。「君のすばらしさのあまり、僕は言葉すらもわすれて君の虜になってしまいそうだ。僕をとりこにさせる君との長電話の時間数よ、ああ、2時間35分」みたいな解釈です。どちらかといえばこっちが正解、というか読み筋としては「太い」かなとも思います。

何を話したかなんて覚えてなくても2時間35分は過ぎていく。恋愛の盲目性、刹那性を提示してもいるようです。

青沼詩郎

参考Wikipedia>初期のRCサクセション

参考歌詞サイト 歌ネット>2時間35分

RC SUCCESSION | RCサクセション – UNIVERSAL MUSICサイトへのリンク

『2時間35分』を収録したRCサクセションのアルバム『初期のRCサクセション』(オリジナル発売年:1972)