板張りの遊歩道のかげに隠れて
R&Bグループのほうのドリフターズの曲。邦題『渚のボードウォーク』。
洋楽のオールディーズなカタログだいたいおんなじに聞こえてしまう病が私にはありますが、そんな粗雑なカテゴリ付けを許してもらったとしても、本曲のサビの「under the sea〜♪」のところの高音に渡るボーカルの歌唱、質感、メロディのアイデンティティには光ってあまりあるものがあります。
ボードウォークというと板張りの遊歩道との意味だと思います。日本の湿地帯の観光地を歩くような、人間が板の下に入るのは困難なサイズ感の「ボードウォーク」もあると思いますが、本曲が描くのはそれよりはだいぶ規模の大きなboardwalkのようで、恋人が人目を忍んで日陰を得られる、すなわち複数人の人体が入り込んだり、あるいは入り込むどころかboardwalkの下を歩行者が通行できたりする規模のboardwalkを描いている模様です。
かろやかでカジュアル、力の抜け具合が絶妙な本曲のサウンドは曲名のとおり「裏通り感」。恋愛に慣れてらっしゃるムフフ感があって、エスコート上手だったり穴場を知っているツボを心得た紳士な態度を音楽そのものに感じます。
そんな裏通りっぽい熟れっぷり?に共感したアーティストは多いようで、たとえばロック名曲『HUSH』をパフォーマンスしたオリジナルアーティストとしても知られるビリー・ジョー・ロイヤル、ローリング・ストーンズ、ビーチ・ボーイズのカバーもあるそう。日本語でカバーした荻野目洋子さんバージョンもあり。英語で実演した柳ジョージさんの濃ゆいパフォーマンスなども見つけました。
人目を忍んだところでよろしく(なかよく)愛を育む態度に「品」の感覚が実ります。
Under the Boardwalk 渚のボードウォーク The Drifters 曲の名義、発表の概要
作詞:Arthur Resnick、作曲:Kenny Young。The Driftersのシングル、アルバム『Under the Boardwalk』(1964)に収録。
The Drifters Under the Boardwalk(アルバム『Under the Boardwalk』収録)を聴く
小さなイヤホンで適当に聴いたときはてっきりドラムレスかと思ったのですがカッと短く鳴るスネアのリムショットが歯触りかろやか。ボインと深いアコースティックベースのアタックや音の立ち上がりの輪郭にまぎれてわかりづらいですがキックドラムもやんわりと鳴ってベースのアタックと協調(シンクロ)しているかもしれません。シュッシュッシュッシュ……とキレの短い8分割のリズムはマラカスなどの振りもの楽器かと思います。ブラシのプレイみたいなサウンドにも感じます。
リードボーカルの歌唱が絹のようになめらか。「Under the boardwalk」の主題を1オクターブ低い位置でほかのボーカルが唱えてからリードボーカルがおよそ1オクターブ高い音域でハリのある響きで魅せます。ヴァイオリン族の音色も弓のはずむ躍動感とアナログのあたたかなサウンドが耳に伝わってきます。カララっとフラッパーカスタネットがボードウォークの上を行き交う通行人の笑い声のようです。チッチッチッチ……とイントロのギロも軽くて熟れ感。
青沼詩郎
参考Wikipedia>Under the Boardwalk
参考歌詞サイト Genius>Under the Boardwalk
『Under the Boardwalk』を収録したThe Driftersの『Under the Boardwalk』(1964)